2005 Fiscal Year Annual Research Report
生後発達に伴う脳の再生能低下のメカニズム:新たな神経再生の試み
Project/Area Number |
16500234
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
川野 仁 (財)東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 副参事研究員 (20161341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三五 一憲 (財)東京都医学研究機構, 副参事研究員 (50291943)
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Keywords | 脳 / ドーパミン神経路 / 神経再生 / 繊維性瘢痕 / アストロサイト / コンドロイチン硫酸 |
Research Abstract |
成熟哺乳類の中枢神経系では損傷後の神経再生がほとんど起こらない。その理由として、グリア瘢痕、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)、繊維性瘢痕など、軸索再生を阻害する種々の因子の存在が提唱されているが、いまだにその原因は特定されていない。私たちは生後発生過程のマウスを用いて黒質線条体ドーパミン神経路を外科的に切断し、生後7日までの幼若マウスでは黒質線条体神経路は損傷後に再生するが、生後2週以降になると神経再生が起こらないことを見いだした。さらに神経再生が起こらなくなる時期は損傷部に繊維性瘢痕が形成される時期と一致することから、繊維性瘢痕が神経再生に阻害的に働くと考えられた。そこで繊維性瘢痕の主成分であるIV型コラーゲン分子の重合を阻害する鉄キレート剤である2,2'-dipyridyl(DPY)を軸索再生の起こらない生後2週間および成体のマウス脳の損傷部に微量注入すると、切断された中脳ドーパミン線推が損傷部を越えて再生した。この場合、コラーゲン繊維が消失するとともに繊維性瘢痕も消失していたが、反応性アストロサイトやプロテオグリカンは損傷部周囲で増加しており、したがって繊維性瘢痕がドーパミン線維の再生を阻害する主要な因子であることが結論された(Kawano et al., J.Neurosci.Res., 80:191-202, 2005)。 損傷後に増加するCSPGは一般には再生線維の伸長を阻害すると考えられているが、私たちは発生の過程でCSPGが神経路の形成に重要であることを見いだしている(Li et al., Eur.J.Neurosci.22:2689-2696, 2005)。そこで、成熟マウスの黒質線条体ドーパミン神経路を切断し、術直後、コンドロイチン硫酸を分解する酵素であるコンドロイチナーゼABCを損傷部に注入した。するとコンドロイチン硫酸が消失し、神経再生が起こったが、同時に繊維性瘢痕の形成も阻害されていた。以上の結果は、CSPGが神経再生を阻害するのではなく、繊維性瘢痕の形成に関与することを示唆している。
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