Research Abstract |
《目的》スンクスの野生集団は熱帯・亜熱帯に生息し,マウスに較べて低温に弱く,体温維持が不安定と推測される.この原因として摂取する餌の関与が考えられる.マウスでは蔗糖水を摂取させると褐色脂肪組織(BAT)の肥大化を誘導し,熱産生能力が増大することが報告されている.したがって,スンクスに対しても蔗糖水を摂取させた場合には,BATの肥大化を誘導し,耐寒性を改善できることが期待された. 《方法》離乳直後からスンクスに対して蔗糖水を50日間摂取させ,BATや白色脂肪組織(WAT)など熱産生に関与すると思われる組織の形態学的変化を観察した.実験にはKAT系統のスンクス雄個体を用いた.雄個体が2匹以上生まれた同腹仔を選抜し,それぞれを18-21日齢で離乳させ,一方を水道水投与群,一方を0.33M蔗糖水投与群として50日間飼育した.各個体より,肝臓,腎臓,心臓,膵臓,WAT,BATを採取した.また,肝臓,心臓,WAT,BATは重量を測定し,肝臓,腎臓,膵臓,WAT,BATはブアン液中で固定し,HE染色により組織学的変化を観察した. 《結果と考察》蔗糖水の投与は,スンクスにおいてもBATの肥大化を誘導した.D2やUpc-1のmRNAの増加も観察された.しかしながら,多飲,多尿,高血糖といった糖尿病様状態,さらには成長率の低下や脂肪肝が同時に観察された.蔗糖水の投与はBATの肥大化を誘導したことから,耐寒性を改善できる可能性が示唆されたが,糖尿病様状態や脂肪肝も同時に観察され,特に多尿は飼育環境の悪化をもたらし,体温の喪失を招く恐れがある.従って今後,BATの肥大化を誘導するものの,糖尿病様状態を誘導しない蔗糖水の濃度を検討する必要があると考えられた.またカロリーの点では脂肪に転換することも考慮する必要がある.
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