2005 Fiscal Year Annual Research Report
トレーニングが高強度運動による筋小胞体ATPaseタンパクの酸化を防御できるか?
Project/Area Number |
16500419
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
松永 智 大阪市立大学, 体育学研究室, 講師 (70221588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 一志 大阪市立大学, 体育学研究室, 助教授 (50167160)
和田 正信 広島大学, 総合科学部, 教授 (80220961)
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Keywords | 高強度運動 / 高強度トレーニング / 筋小胞体 / タンパク質酸化 / Ca^<2+>-ATPase |
Research Abstract |
筋収縮や筋弛緩のシグナルとしての働きを持つカルシウムイオン(Ca^<2+>)は、筋細胞内では、筋原線維に付着して存在する小器官、筋小胞体によって主にコントロールされている。近年、この器官の機能不全が筋疲労を招来する大きな要因として注目されており、我々は今までの先行研究において、筋小胞体Ca^<2+>-ATPaseタンパクの酸化がこの機能不全に関与していることをみいだしている。しかしながら、トレーニングにより筋小胞体機能が亢進し、このCa^<2+>-ATPaseの酸化の防御に貢献する可能性が推察されるが、詳細については未だ不明である。本研究では、高強度トレーニングが筋の疲労軽減に貢献するという仮説を立て、その検証を行うことを目的としている。 一過性の高強度運動による筋小胞体機能の変化について、運動直後とその回復過程をみた実験において既に以下の点をみいだしている。高強度トレッドミルランニングを疲労困憊まで行ったラットの外側広筋及び腓腹筋表層部では、SR Ca^<2+>-ATPase活性は、運動直後に有意な低下(P<0.01)を示し、60分後に運動前の値に回復した。免疫ブロッティング法を用いたCa^<2+>-ATPaseタンパク質の酸化の度合は、反対に運動直後に5%水準で有意な増加を示し、60分の回復時間を経て運動前の値に回復している。これらのことから、筋小胞体機能の低下と回復は、タンパクの酸化と還元に強い関係があることを明らかにしている。 本年度は、Wistar系雄性ラットに5週齢から8週間にわたり高強度走トレーニングを行い、筋小胞体機能の変化を検討した。主働筋である外側広筋及び腓腹筋表層部の筋小胞体機能のうちCa^<2+>-ATPase活性とCa^<2+>放出速度には、変化が認められなかった一方、Ca^<2+>取り込み速度には有意な増加(P<0.05)が認められた。また、これらの筋の筋線維組成にはトレーニングによって変化がみられなかった。これらのことは、今回のトレーニングは筋線維タイプの移行を導かなかった。またこのトレーニングが、筋収縮のうちでも筋小胞体のカルシウムポンプが大きく関与する筋弛緩に対し、その速度上昇に効果があることが明らかとなった。現在、筋小胞体Ca^<2+>-ATPaseタンパク質の酸化の度合いに対する検討を行っているところである。
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