2005 Fiscal Year Annual Research Report
性教育の体系化とエビデンスに基づいた実行可能な性教育モデルの開発に関する研究
Project/Area Number |
16500454
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
松浦 賢長 福岡県立大学, 看護学部, 教授 (10252537)
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Keywords | 性教育 / 体系化 / 学問構築 / エビデンス / 評価 / 思春期 / 人工妊娠中絶 / 性感染症 |
Research Abstract |
本研究においては,エビデンスに基づいた性教育の体系化・開発にあたって以下の基礎的議論をおこなった。 わが国では,バブル期(1985-1992)を前後して,十代の人工妊娠中絶率(現在は減少中)および性感染症罹患率の上昇がみられていた。性交開始年齢が高年齢化し,性行動・性意識が停滞化するなかで,それら指標の悪化が進んだことになる。これまでは,性交開始年齢が低年齢化しており,性行動が活発になっているがゆえに,性の問題(中絶やSTD)が増加している,というsimpleな見方(量的相関仮説と命名)が主たるものであった。それらの性の問題に対する対策(性対策)も,この仮説の上に成り立つものとして展開されてきた。 バブル期以降,evidenceに基づけば,量的相関仮説は説得力を失った,もしくは誤りであることがわかった。われわれには,性交開始が遅くなり,かつ,性行動が停滞する中で,なぜ性の問題が増加したのかということを説明しうる新たな仮説が必要となった。これを説明する新しい仮説は「性の敷居」仮説と呼ぶもので,世界のあらゆる社会でみられる性の慎重さという事象(メタ事象)と整合性をもたせたものである。この仮説に従い,人工妊娠中絶は減少し,STDは増加か横ばいで推移するだろうという予測を打ち出した。この状況を改善するためには,性のプロモーションという視点が必要となる。すなわちそれは,思春期後期に<性のちから>が十分に育ちあがるような,生後十数年間の成育環境と支援が必要だということを意味している。 これらの議論から,現代の思春期の子どもたちの性の諸相においては,非常に<格差>が大きくなり,その格差に対応しうる性教育プログラムが必要だと論じた。これらの議論に基づき,学校における性教育の新しい在り方として,カフェテリア方式をはじめとする各種の小集団方式を用いた性教育を確立した。
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