2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16500487
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Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
増田 美子 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (90099234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河島 一恵 共立女子大学, 家政学部, 教授 (60086733)
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Keywords | 女性 / 顔隠し / ヴェール / 角隠し / 被衣 / 綿帽子 / 白布 |
Research Abstract |
最終年度を迎えるに当たって、今年度は主テーマを「婚礼におけるかぶりものの意味」に絞り、女性の顔隠しの起源と要因、その後の歴史的変遷、更にはこれが儀礼と結びついて現代まで継承されてゆくプロセスとその背景を明らかにすることを目的として研究を行った。 1.日本;平安前期より上流女性の顔隠しが始まるが、これは儒教の隆盛と社会情勢の変化によるものと考えられ、この風習は近世まで継承されてゆく。一方で、中流以下庶民女性も中世には被衣を被ることが常態となる。しかしこの被衣は、顔隠しよりもむしろ仏教の女性蔑視思想に基づいて女性の象徴である髪更には女性全体の姿を隠す為のものであった可能性が浮かんできた。近世になると極上流女性以外は顔を見せるようになり、ファッションとして逆に男性の目を引き付けることを目的とした被り物の流行もみる。明治以降花嫁の被り物は被衣から綿帽子へとその主流が移行し、大正になると角隠しが盛行するが、これら婚儀の際の被り物はかつて女性が顔を隠し・女性であることを隠すことを求められていた歴史の遺物である。(増田美子・梅谷知世・諏訪原貴子) 2.ヨーロッパ;教会での典礼時に女性が被るヴェールは、『新約聖書』の聖パウロの言葉に関わりをもつ。古代ローマ末期の教父らは男性を誘惑する罪深い存在として女性をとらえ、女性に顔を隠すためヴェールをかぶるよう求めた。聖パウロの言葉はこのようなローマの女性観と結びつき、以後ヴェールは顔を隠す意味合いをもつかぶりものとなってゆく。また近世の典礼時のヴェールには宗教改革が影響を及ぼした。一方で近世には、日本と同様にファッションとしての仮面が登揚し、異性を引き付ける道具としての顔隠しの事例がみられる。(河島一恵・黒川祐子・内村理奈) 3.イスラム;強烈な陽射しや砂塵からの防護という実用目的から被られ始めたヴェールであるが、BC13〜15世紀頃に、男性保護下にある女性と他の女性を区別するためにヴェール着用を義務付ける法律が出された。その後「コーラン」の中で、女性は大切な所・美しい所を限られた人以外には見せてはいけないとされるようになり、これが現在のイスラム社会に継承されている。(大枝近子)
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