2004 Fiscal Year Annual Research Report
生態系保全を目的とする外来アライグマ対策構築への合意形成に関する研究
Project/Area Number |
16510017
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池田 透 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50202891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立澤 史郎 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助手 (00360876)
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Keywords | 外来種 / アライグマ / 合意形成 / 生態系保全 / アンケート |
Research Abstract |
野幌森林公園周辺地域住民意識アンケートでは、江別市・北広島市・札幌市厚別区それぞれに2000通、計6000通のアンケート調査を実施し、各々629通、684通、568通の回答を得た。アライグマの野生化自体を知らない人も多く、特に厚別区は約7割の人がその存在を知らず、江別市でも5割強、北広島市でも5割弱の人たちには、存在が知られていない。これは、一部の農業被害地域を除いてはアライグマの存在が問題とされていないことが予想され、生態系被害への住民意識の低さが予想された。 一方で、アライグマが存在することについては、3市共通で9割の人がその存在は問題であると考えており、問題ではないと考える人は1割に満たない。ただし、問題とする内容は、農業被害の率が高く、続いて在来種との競合・在来種の捕食が意識されている 駆除事業の展開については、江別・北広島市では2割、厚別区に至っては1割以下の人しか実態を知らない。しかし、駆除に対する賛同意識は強く、ほぼ9割の人たちがアライグマを駆除すべきと考えていることが明らかとなった。駆除の理由としては農業被害が高く意識されているが、在来種の保護も比較的高く意識されており、身近な状況には気付いていないが、外来種に対する問題意識は社会に普及しつつあることが予想された。 さらに、アライグマ対策への合意形成に向けて、地域社会における講習会の効果を測定する目的で、富良野市において市民向けのアライグマ問題講習会を開催した。富良野市はアライグマ情報が出始めたばかりであり、まだ地域に情報が浸透していないことが予想されたが、アライグマの侵入が日本で生じていることは参加者のほとんどが知っており、また、知らなかった人も、講習会後のアンケートでは、アライグマの存在を強く問題視するようになっていた。最初から外来種への意識は高かったものの、講習を聞いた後では、アライグマ駆除に積極的な態度が強くうかがえ、情報を地域に還元し、現状を正しく理解することが対策への合意形成には重要と考えられた。なお、ごく一部の人は共存の在り方を模索しようとしていたが、このような方向性も決して無視すべきではなく、情報の提供を続けながら合意の方向を探る必要があるものと考える。
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