2005 Fiscal Year Annual Research Report
胎盤・母乳経由ダイオキシン摂取によって誘発される脳神経伝達物質異常・行動異常
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16510040
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
口岩 聡 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (90161637)
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Keywords | ダイオキシン / 脳影響 / 行動異常 / 環境ホルモン / TCDD / 神経伝達物質 / ノルエピネフリン / 内分泌攪乱化学物質 |
Research Abstract |
前年度の研究を継続し、胎盤経由または母乳経由でのダイオキシン暴露によるマウス産子の行動異常および脳内モノアミンへの影響を調査した。雌マウスに、2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)を数週間にわたり継続的に経口投与し、 TCDDを体内蓄積させた。TCDDの最終投与のあと、これらの雌マウスを正常雄マウスと交配し妊娠させ、産子を得た。産子は生後28日まで母乳飼育し、その後隔離飼育した。生後6週から10週にかけて産子の行動学的調査を行い、また脳内モノアミン量の変化を生化学的に定量し、対照群マウスと比較した。TCDD暴露を受けた産子は、体重、栄養状態、運動機能および運動状態に変化は見られなかったが、対照群に比較して総移動距離の減少が見られ、またsocial interactionにおける正常マウスとの接触回数が有意に減少した。また、軽い接触刺激に対して過敏に反応する症状が強く現れる産子が多数存在した。脳内のノルエピネフリン量の生化学的定量では、対照動物に比較して、産子の中脳において有意な増加が見られた。以上の結果は、 TCDDの胎盤暴露および/または母乳暴露は、長期にわたり脳ノルエピネフリン産生に影響を与え、また長期にわたる行動異常を発症させることを示している。すなわち、 TCDDの胎盤・母乳暴露により脳に永久的な障害が発症したと考えられた。 また、生後5週から6週におけるTCDD胎盤・母乳暴露を受けた雄産子の自由探索行動をノーズポーク課題測定装置を用いて調査した。その結果、生後6週の暴露雄マウスでは、正常雄マウスに比較して自由探索行動の反応回数が少ないことが明らかになった。この時期は精子形成期に一致することから、脳内の性ホルモンの変化が自由探索行動の低下に関係した可能性が示唆された。
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