2005 Fiscal Year Annual Research Report
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16510147
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
赤間 一仁 島根大学, 生物資源科学部, 助教授 (50252896)
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Keywords | tRNA / シロイヌナズナ / ゲノミクス / アンバー・サプレッサー / GUS / アグロバクテリウム / 形質転換 / パーティクルガン |
Research Abstract |
高等植物で初めて全ゲノムDNA配列が解読されたシロイヌナズナは562の核tRNA遺伝子の存在が推定されており,その網羅的なtRNA機能発現解析が植物tRNA研究の大きな課題である。本年度は植物核tRNA遺伝子の転写調節解析を進めるモデルケースとして,シロイヌナズナtRNA^<Lys>遺伝子に着目し,アンバーコドンを持つレポーター遺伝子の酵素活性の回復を指標としその機能発現を解析した。 シロイヌナズナの第一染色体に見出された二つのtRNA^<Lys>遺伝子(226-Lysと227-Lysと呼ぶ)は同一の構造遺伝子配列を持つが隣接配列に相同性はほとんどない。そして,5'末端配列において,227-Lysは転写開始点付近の配列がGTリッチであり,タバコ培養細胞BY-2の核抽出液に基づくin vitro転写系で両者の転写実験を行った結果,227-Lysは226-Lysの10%以下の活性しか認められなかった(湯川泰博士私信)。これらtRNA^<Lys>遺伝子の発現が生体内での転写制御およびシロイヌナズナでのそれを反映しているのかをin vivoの系で調べた。まず,in vivoで高いアンバー・サプレッサー活性を持つtRNA^<Ser>/amber(NtS2-am)(Akama and Beier,2003)の5'末端領域の-7から-3(5'-GACAA-3')の位置に226-Lysの特徴的な配列である5'-TCAGC-3'と227-Lysに特徴的な配列(5'-TTGTT-3')を試験管内突然変異法により導入した(それぞれ226-Lys::NtS2-amと227-Lys::NtS2-amと呼ぶ)。これらの遺伝子コンストラクトと翻訳開始点付近にアンバーコドンを持つGUSレポーター遺伝子(GUS/amber)を一緒にパーティクルガンを用いてタマネギ細胞に,あるいはアグロバクテリウムを介してシロイヌナズナの胚軸由来のカルス細胞に導入して,GUS/amber mRNAのアンバーコドンのサプレッショ効率(ブルースポットの数,GUS酵素活性)から,226-Lys::NtS2-amと227-Lys::NtS2-amの転写活性を求めた。この結果,染色パターン,酵素活性のいずれにおいても,226-Lys::NtS2-amが227-Lys::NtS2-amに比べて,5倍程度の高い値が得られ,in vitro転写系の結果と一致した。以上の結果から,植物核tRNA遺伝子の5'末端シス配列がそのin vivo転写活性を大きく規定すること,アンバー・サプレッサーNtS2-amを基盤とした5'隣接配列を置換したキメラ遺伝子を構築することで網羅的なシロイヌナズナtRNA遺伝子の機能発現p解析に今後広く適用可能であることが判明した。
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