Research Abstract |
アトピー性皮膚炎やかゆみを伴う慢性内科疾患などの治療に不可欠な新規の抗かゆみ薬を開発する目的で,数種のかゆみモデルマウスを用いて,かゆみの発症及び増強メカニズムの解明と天然資源からの新規かゆみ抑制物質の探索を以下の様に検討した. 1.前報で一酸化窒素(NO)とかゆみとの関連を示したことから,今回は,かゆみモデルでの血液中NO_2及びNO_3の量ダイレクト測定を試みた.まず,卵白リゾチーム(HEL)抗原特異的かつIgE抗体依存性アレルギーによるかゆみ惹起モデルにおける,HEL感作後の血中NOの量を,経時的に測定した.その結果,NO_2はほとんど産生されなかった.一方,NO_3は感作の1日後に一端減少した後,3,6,9日目と増加し,本モデルのかゆみ惹起日である9日目では正常時の約18倍まで増加することを明らかにした.また,このNOの合成酵素を誘導型NO合成酵素(iNOS)と推定し,感作マウスでのiNOS発現をWestern blot法により検討した結果,末梢である尾部血管,並びに心臓,肝臓,腎臓の各臓器では発現が観られなかったが,胸腹部大動脈血管において,感作マウスにのみにiNosが発現していることを確認した. 2.脱顆粒惹起剤であるcompound 48/80,かゆみ関連物質であるセロトニン,血小板活性化因子(PAF),炎症部位で特異的に増加するプロテアーゼで惹起するかゆみへのマウスの回避反応(掻動作)を指標としたアッセイ法を用いて,I.textoriの花から,抗かゆみ活性を有するフラボノイド誘導体を単離し,その活性メカニズムについても考察した.更に,新規にスクリーニングを行い,中薬や民間薬で水虫のかゆみ抑制を目的に利用されている木槿花に抗かゆみ活性を見出し,伝承薬の効果を科学的根拠で証明した.現在,木槿花の活性本体を検討中である.
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