2005 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシアにおける民主化とジェンダーの主流化-イスラームとの関連性
Project/Area Number |
16510193
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
大形 里美 九州国際大学, 国際関係学部, 助教授 (30330955)
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Keywords | イスラーム / ジェンダー / 民主化 / インドネシア / 価値観の相違 / リベラル派 / 人権 / 信仰の自由 |
Research Abstract |
信仰の自由や、女性や異教徒の人権などに関する西欧的価値観とイスラームの伝統的価値観の相違は、近年イスラーム諸国内部において政治的社会的摩擦を引き起こしている。現在多くのイスラーム諸国では、西欧的な消費生活スタイルが都市部を中心として着実に浸透してきており、特にセクシュアリティーに関する分野においては、古典的なイスラーム法解釈に基づく理想と現実の間に明らかな乖離が見られ、イスラーム家族法の改革などが急務となっている。 インドネシアにおいては、1970年代以降のイスラーム教育改革を背景に、イスラーム教義の文脈的解釈の必要性を主張するリベラル派イスラーム知識人が、近年政界などでも活躍し始めている。1998年の政変以降、民主化プロセスが進む同国では、国家政策にジェンダー主流化政策が組み込まれ、婚姻法改革をめざす動きが宗教省内部から起こっているが、こうした動向もそうしたリベラル派の存在が背景にある。しかしその一方で、民主化時代を迎えた同国では、イスラームの保守派勢力による活動も顕著であり、地方分権化を背景に、地方におけるイスラーム法施行を目指す原動力となっている。保守派勢力は、西欧社会がキリスト教の布教などを通じて、イスラーム社会の伝統的価値観を侵食し、イスラーム社会を支配しようとする陰謀を持っていると捉えており、西欧諸国から資金を受け、異なる宗教に対して寛容な思想を普及させるリベラル派に対して強い敵対心を抱き、両者は近年激しく対立している。 平成17年度は、リベラル派勢力がどのような背景の下に形成され、どのような系譜を有しているのかを明らかにするため、関係者へインタビューを行うとともに、地方におけるイスラーム法施行の動きが、どの程度民意を反映した政策であるのかを検証するため、イスラーム教義解釈・教義の実践状況・性別役割などに関する意識調査を、同国の3地域の住民を対象に実施した。
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