2004 Fiscal Year Annual Research Report
ジェンダー・階級・人種からみたアメリカ占領軍下日本における買売春-GIの証言から
Project/Area Number |
16510194
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
有賀 夏紀 埼玉大学, 教養学部, 教授 (20114358)
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Keywords | ジェンダー / 軍隊 / アメリカ軍占領下 / RAA / 人種 / 階級 / 性 / 女性 |
Research Abstract |
今年度の研究目標は、第一に、課題に関する研究書・論文を読み、研究動向を把握するともに、自分なりの理論的枠組をつくること、第二に、一次資料となる元GIの日本占領時における体験の聞き取り調査を行うことにあった。全体にみて、第一の目的はほぼ達成したが、第二はわずかにしか果たすことができなかった。軍隊と性・ジェンダーの関係についての研究では、Cynthia Enloeによる研究がジェンダーと人種の関係についての理論的枠組を提供しているが、ドイツ占領下に関して最近行われている実証的研究と日本占領下に関する従来からの研究を読み両国を比較することにより、人種の問題は一層明確にされた。しかし、軍隊と性・ジェンダーの関係を明らかにするには人種の他に階級的観点が重要である。従来の研究ではこの観点はあまり明確にされていないが、私はこの観点を組み込み、アメリカ軍日本占領下に日本政府主導で行われたアメリカ軍兵士による買売春(RAA)に関する論文を完成させた。第二については、夏にカリフォルニア州リッチモンド市で、第二次大戦直後占領軍兵士として日本に滞在したクリフォード・ウォーカー氏を面接し、氏が見た日本の町、日本女性との交際から結婚に至るまでの経緯その他についての話を長時間に渡り聞いた。氏は黒人であり、軍隊における人種関係についても知ることができた。本研究を完成させるには多くの事例が必要であり、来年度の夏は一次資料の聞き取り調査に集中したいと考えている。また、本研究の課題である戦争とジェンダーに関連して、9月11日以降のアメリカにおけるジェンダー観の変化(伝統的男性像の復権)と国民のイラク戦争支持およびブッシュ大統領再選との関係について講演を行った。さらに、本課題の経済的側面としてアメリカの消費文化も重要な問題であるが、京都でのアメリカ消費文化に関する研究会で発表した。
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