2004 Fiscal Year Annual Research Report
就業におけるジェンダー・ギャップの実態と背景、解決方法に関する日英比較研究
Project/Area Number |
16510209
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
池谷 江理子 高知工業高等専門学校, 一般科目, 助教授 (30249867)
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Keywords | ジェンダー / 地理学 / 経済地理学 / 国際比較研究 / ジェンダー・ギャップ / イギリス:日本 / 就業 / 子育て |
Research Abstract |
平成16年度における文献・統計による解析ならびに研究と現地調査から、以下の事柄が判明した。 イギリスにおいては、第二次世界大戦後、女性の就業分野への社会進出が顕著である。特に80年代以降、子育て中の母親を含む女性の雇用労働への進出が進み女性就業におけるM字カーブが解消された。背景には労働の女性化と第二波フェミニズム、母性権利法・均等法制定が指摘される。ジェンダー・ギャップに関していえば男女の賃金格差は依然として大きく(約25%)、男性は管理、女性はケアといった職種による棲み分け(セグリゲーション)が遅々として解消されないことが大きな問題であるとされている。ギャップ解消に向けての行政の取り組みとしては、均等政策の一環としての機会平等委員会設置のほか、現ブレア政権の「子ども第一」政策の中で「ファミリー・フレンドリー」が重視され、取り組みが弱かった子育て環境整備への支援がなされつつある。 イギリスにおける女性の労働参加において、日本と比べ注目される背景として、家族賃金の崩壊、家族形態の多様化、移動・参入の容易な労働市場、短い労働時間、低賃金ではない短時間労働形態の存在が挙げられる。また、M字カーブ解消の背景も注目される。子育て中の母親の就業に際し、公的保育施設は少ないが、家族・知人などインフォーマルなケア、あるいは市場ベースのチャイルド・マインダーやナニー、ナーサリーなど様々な形態の保育がなされている。この背景には母親以外が育児を担うことへの社会的合意と保育市場の存在が指摘される。 日本における女性の就業参加は進んだが、M字カーブは存続し、女性の不安定就業比率は高く実質賃金のジェンダー・ギャップは5割に及ぶ。この背景には年功序列賃金、役割分業観、年金・扶養制度等に組み込まれたジェンダー・バイアス、母性神話、性別職業分離、教育、家制度や儒教的道徳の名残等が指摘される。
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Research Products
(3 results)