2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520030
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
品川 哲彦 関西大学, 文学部, 教授 (90226134)
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Keywords | ケア / 責任 / 正義 / 倫理学 / 未来世代 / 近代批判 / リベラリズム / 生 |
Research Abstract |
本研究は、ケアの倫理、H・ヨナスの責任原理に焦点をあて、正義を基底とする倫理と対照することでケア・責任・正義の相補的研究を行うものである。昨年度は責任原理に、今年度はケアの倫理に比重をおいて研究を進めてきた。ケアの倫理の創始者ギリガンがケアの倫理と正義の倫理とを対比して提示して以来、倫理の最も基底にある価値をめぐってケア対正義論争が展開されてきた。とりわけ、正義・権利概念に否定的なノディングスには、ケアの倫理の擁護者の間にも強い反論があった。本年度は、カード、トロント、クレメント、オウキン等の論者を研究するとともに、正義・権利概念に対する攻撃を和らげ、ケアの倫理に基づく社会哲学を展開しつつあるノディングスの近年の著作を研究した。その成果の一つとして、ケアの倫理の社会哲学の基礎概念のひとつであるニーズについて、ケアの倫理には属さないイグナティエフ、テイラーとケアの倫理の議論を比較考察して、日本社会学会大会シンポジウム「法主体のゆくえ」(5月16日)で報告し、論文「ケアの倫理、ニーズ、法」にまとめて『法社会学』64号(2006年3月刊行)に発表した。このようにケア対正義論争は対立から統合の試みを経て新たな段階に入っており、それについてヘルド等の研究を通して跡づけつつある。また、日本倫理学会大会シンポジウム「倫理学の現実(リアリティ)」(10月9日)で、ケアの倫理、責任原理が倫理学の問いのなかに占める位置について言及した。責任原理についてはこのほか、関西哲学会発行の『アルケー』に論文「人間はいかなる意味で存続すべきかヨナス、アーペル、ハーバマス」を発表し、ヨナスと討議倫理学との対立関係の調査のため3月にケルン大学等を訪問した。また、ジェノバ大学のベッキ教授の提案を受けて、ヨナスとアーペルを主題とする彼の論文を訳出した(2006年度中に発表する予定)。
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Research Products
(4 results)