2004 Fiscal Year Annual Research Report
洋務世代知識人における西洋体験と文明観の転換に関する研究
Project/Area Number |
16520033
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
手代木 有児 福島大学, 経済経営学類, 教授 (20207468)
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Keywords | 洋務運動 / 西洋体験 / 文明観 / 中国文明 / 西洋文明 / 薛福成 / 鍾天緯 |
Research Abstract |
本研究は、清末における伝統的文明観から中西文明を異質と見なす文明観への転換を、薛福成(1838-94)と鍾天緯(1840-1901)とうい二人の洋務世代知識人に注目して明らかにしようとするものである。16年度前半においては薛福成、鍾天緯と周辺に関する未収集資料の収集とその閲読をすすめ、後半は資料閲読と並行して論文「洋務世代知識人における西洋体験と文明観の変動」(400字×200枚予定)の草稿執筆を開始し、序論と薛福成論の部分についてはほぼ書き上げた。以下に薛福成論の要旨を示し研究実績の報告とする。 西洋出使前、薛福成は洋務運動期における西洋情報の急激な増大の中で、積極的に情報を収集し西洋認識を深めていく。その結果、彼は国際秩序の「華夷隔絶の天下」から「中外聯属の天下」への転換をみいだし、西洋に学ぶ変法による中国の富強化を唱えた。しかし文明観においては中華文明を唯一普遍の文明とみなす伝統的文明観を持ち続け、依然として中国を古聖人の「不変の道」を守る「中華」、西洋諸国を「中華」による教化の対象と捉えていた。こうした国際秩序観と文明観からなる世界像の枠組みは、西洋出使期(1890-94)においても崩壊するには至らず、現実世界(国際秩序観)における西洋諸国の優勢と、観念世界(文明観)における中国の優位(中国=中華、西洋=夷狄)という世界像の分裂状況は、一定の修正を経つつも維持された。しかしながら薛福成おいては同時に西洋認識の深化に伴い、そうした従来の世界像の枠外で、伝統的文明観におさまらない中西文明の異質性への認識につながる個々の事実への発見が蓄積され、実質的には伝統的文明観からの転換が準備されつつあった。
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Research Products
(2 results)