Research Abstract |
最古の『リグヴェーダ』(前1200年頃)から古典サンスクリットに至る「古インドアーリヤ語」に現れる動詞語形を,重要語根について収集し,各語形を原典に基づいて検証の上,語形一覧を作成することを目的とする。本年度の成果の主なものは次の通りである。 前年度に引き続き,資料(ファイル16冊分)の整理点検を行った。近年,インド,イラン,その他のインド・ヨーロッパ諸語について,動詞研究,文法研究各部門に進展があるため,それらの文献を集めて点検した。このため,当初予定していた具体的成果の作成はやや遅れている。 標記動詞研究の,いわば副産物として,動詞dabh「欺く」に関わるadbhuta-等の研究を日本語とドイツ語で発表した。ドイツ語版には,インド・イラン語派における3閉鎖音連続の音韻変化について,詳細な検討を付した。論文「雪が焦がす」も,dabhと似た構造をもつ動詞語根pros/prus「滴らせる」およびplos/plus「焦がす」の研究である。さらに,従来インド・ヨーロッパ祖語に想定されていた同音異義語根^*preus「焼く」および「凍る」には根拠がないことを論証し得たものと信ずる。これらの発表は,全活用形,派生形一覧表作成の成果に基づいてなされたものである。当初,印欧語学会(Indogermanische Gesellschaft)学術大会への参加を計画していたが,開催時期が2006年4月に変更になったため,取りやめた。 その他の研究発表(アシュヴィン双神とその前史[英語],輪廻と業に関するもの[英語],考古学へのコメント[日本語]など)には言及しないが,それらの研究においても,主題に関わる動詞研究が中核を担っている。
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