2006 Fiscal Year Annual Research Report
二十世紀後半のアラブ世界におけるイスラム教徒の「他者/自己」像の形成とその変容
Project/Area Number |
16520052
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
八木 久美子 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (90251561)
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Keywords | イスラム / イスラーム / 他者 / 自己 / 宗教 / 宗教 |
Research Abstract |
1.研究代表者がイギリス、ロンドン大学のSOAS附属図書館所蔵の資料を収集した。 (1)これまで収集し分析を行ってきた資料は、アメリカを対象としたものが多かったが、今回、イギリスというアラブ世界とは歴史的に深い関係を持つ対象を「他者」とした資料を入手することにより、アメリカについて描く他者像とイギリスなどの西欧諸国に対して結ぶ他者像の間にある違いを確認にすることができた。 (2)イギリスにおけるアラブ人コミュニティの発行する定期刊行物についても、調査を行った。ルシュディー事件以降顕在化したきたイスラム教徒移民の社会的位置づけが、先のムハンマドの風刺画事件を受け、地元の研究者の間で改めて問題となり、そのことがアラブ系のイスラム教徒移民の側のイメージ形成にも影響を与えていることが明らかになった。 2.入手した資料を基に、アラブ・イスラム教徒知識人の描き出した「他者」像の変遷について、以下の点を明らかにした。 (1)他者をキリスト教徒と認識するのであれ、西洋人、あるいはアメリカ人とするのであれ、「彼ら」と「われわれ」」との決定的な差を生み出すものは、宗教心、精神性の有無であるとされる傾向が強く、イスラムとキリスト教という宗教の違いではない。 (2)アメリカと西欧諸国の間には、はっきりとしたイメージの違いがあり、アメリカは20世紀のかなり早い段階から全面的な否定の対象となる傾向が強く、「手本」でありかつ「敵」であると捉えるような、西欧諸国に対して見せたアンビバレントな評価が圧倒的に少ない (3)近年の西欧諸国における(アラブ)イスラム教徒移民をめぐる問題が、「他者」としての西欧の負のイメージを強化している可能性が高い。 3.2の(1)(2)については著作を刊行し、(3)については宗教学会において口頭発表を行った。
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Research Products
(1 results)