2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520098
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西村 聡 金沢大学, 文学部, 教授 (00131269)
|
Keywords | 能楽 / 近代能楽史 / 地方能楽 / 金沢能楽会 / 加賀宝生 / 能楽雑誌 / 飯島佐之六家 |
Research Abstract |
近代能楽史の地方展開を、葛野流大鼓方飯島家における継承を通して追跡する作業に着手した。同家は加賀藩の扶持を受けた町役者の家柄で現在まで10代続き、その間の活動を知る豊富な資料を所蔵している。その資料の分析を開始する前に、今年度は拙稿「金沢能楽会の百年」を対象に、飯島家の人々を含む関係者の人名索引を作成した。これによって地元の能楽界の動向だけでなく、東京を初めとする他地方からの来演の状況も一望できるようになった。一方、地元の能楽師たちは次々に上京して、近代能楽史の有力な担い手となる。彼らの活動を把握するには、能楽雑誌記載の情報を収集する必要がある。この作業を数年にわたって続けてきた。『能楽画報』『謡曲界』等の関係記事は大方収集できたが、それらの中から飯島家の人々の活動ぶりを番組欄に確認することを行った。加賀藩から続く家としては唯一地元に残ったものの、東京ほか諸地方にも進出して、活動の場は地元に限られなかった。シテ方と違って数の少ない囃子方ゆえの特殊事情もあろうが、地方と中央の交流を解明したい本研究にとって、有効な視点を提供してくれる家であるとの認識は強まった。そこで、飯島家に言及した、もしくは飯島家の人々が書いた文献の目録化、飯島家に関する能楽史年表も併せて作成した。また加賀藩時代における能楽の変遷を知るために必要な、藩の文化政策や藩主の嗜好への位置づけに関する考察を、『金沢市史』通史編近世の分担執筆の中で行った(未刊)。近代地方史記述や近代能楽史文献における関係記事の抄出は進行中である。
|