2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520098
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西村 聡 金沢大学, 文学部, 教授 (00131269)
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Keywords | 能楽 / 近代 / 地方 / 雑誌 / 加賀宝生 / 謡曲 / 能楽新報 / 豊臣秀吉譜 |
Research Abstract |
早稲田大学演劇博物館において近現代の能楽雑誌を調査し、目次及び演奏彙報欄の複写を進めた。同様の作業はすでに過年度において『能楽』『能楽画報』『謡曲界』等でも実施しているが、今年度は新たに『能楽新報』『能楽旬報』『現代能楽』について実施した。このうち『能楽新報』は号数が多く、かつ欠号が少なくないので、その全容の把握にはなお多くの時間を要するが、今年度調査分のうち金沢関係に限って見ても、金沢能楽会の各種催しの情報や高島弥五郎・前田利鬯・宝生嘉内らの動向・消息を伝える記事、末松緑「嘉永以来金沢市能楽及謡曲之運命」と題する短章、そして明治43年の前田侯爵家行幸啓能の詳細など、また『能楽旬報』における佐野巌の加賀宝生の変遷に関する連載(『宝生』と『観世』が合併した期間の分は、従来の『宝生』記事の探索だけでは把握できなかった)、『現代能楽』における柿木豊次へのインタビューなど、従来の能楽史記述を補完する記事を少なからず発見できたことは収穫であった。このように各種能楽雑誌は、いずれも近現代能楽史の地方展開を知る基本資料であり、来年度においても引き続き調査・収集に努めたい。 金沢においては昨秋、金沢能楽美術館が開館し、その図録に関係の解説を執筆する過程で、「謡曲」という言葉の起こりについて、とくにそれを「ウタイ」ではなく、「ヨウキョク」と読むことの早い例を、林羅山著『豊臣秀吉譜』の中に2例見いだしたことを収穫として挙げておきたい。「謡曲」の表記自体はさらに早い例(『慶長日件録』)が報告されてはいるが、「ウタイ」の宛字として使用され、「ヨウキョク」の読みが定着するのは宝生流寛政版謡本以後であろうと推定するのが通説であった。『豊臣秀吉譜』の「謡曲」の「謡」の部分に「ヨウ」と振られた読み仮名は、その通説に修正の必要があることを伝えていると言える。
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Research Products
(6 results)