2004 Fiscal Year Annual Research Report
承久の乱後における王権思想の変容と展開に関する研究
Project/Area Number |
16520099
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
弓削 繁 岐阜大学, 教育学部, 教授 (10127798)
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Keywords | 中世国文学 / 歴史論書 / 王権論 / 承久の乱 / 愚管抄 / 五代帝王物語 / 六代勝事記 |
Research Abstract |
本研究は、承久の乱の直後に著された『六代勝事記』に始めて明確に現れる「宝祚長短はかならず政の善悪によれり」という王権・王位に対する二元論的な考え方について、その成り立ちと展開の様態を中世文学史の中に見定めようとするもので、3年計画の初年度に当たる平成16年度は、次のような研究を行った。 1、本研究の前提となる私の『六代勝事記』『五代帝王物語』に関するこれまでの研究の補足として、新たに歴史民俗博物館所蔵の高松宮家伝来禁裏本『五代帝王物語』について調査し、これが現存本中最善のテキストであることを明らかにした。その報告は『岐阜大学教育学部研究報告』第53巻第2号に掲載した。 2、承久の乱の政治史、思想史的な意義を、従来の研究史を縦覧する形で検討してきたが、その結果、本研究の課題は主として儒教的な善政思想の展開に見定められることが明らかになった。その具体相は次年度以降の課題となる。 3、承久の乱に関して、従来『平家物語』の作者、成立説として理解されてきた『徒然草』第226段が、前後いくつかの章段ととも兼好の音曲観乃至歴史意識に裏付けられた記述であるとの知見を得た。成果は次年度に論文化する予定である。 なお、研究計画に掲げた『愚管抄』の思想とその史的意義の解明についても現在研究を進めているところである。
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Research Products
(1 results)