2006 Fiscal Year Annual Research Report
承久の乱後における王権思想の変容と展開に関する研究
Project/Area Number |
16520099
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
弓削 繁 岐阜大学, 教育学部, 教授 (10127798)
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Keywords | 中世文学 / 歴史論書 / 王権思想 / 愚管抄 / 六代勝事記 / 八幡愚童訓 / 徒然草 |
Research Abstract |
本研究は、拙著『六代勝事記の成立と展開』(平成15年、風間書房刊)の成果を承け、承久の乱後に明確になってくる、イデアとしての帝王と現実の天皇とを峻別する二元的な王権思想について、その変容と展開の姿を中世文学史の中に見定めようとするものである。三年計画の最終年に当たる本年度は、次のような研究を行った。 1.承久の乱の直前の思想状況を見定めておくことは本研究にとって不可欠であり、これを『愚管抄』によって検討した。その結果、『愚管抄』は摂家将軍の出現を宗廟神の約諾による歴史の必然と理解し、後鳥羽院の倒幕の企てを道理に惇るものとして牽制しようとする現実的な意図を有することが明らかになった。詳細は「研究成果報告書」(冊子)に論文化として掲げた。 2.承久の乱後の王権思想については、『六代勝事記』と『吾妻鏡』を検討し、『神皇正統記』『梅松論』等への展開に見通しをつけた。 3.『徒然草』第二二六段は従来『平家物語』の成立事情を説明したものとして注目されてきたが、その背景に承久の乱への記憶が存することを明らかにした。王権思想の展開の背景を理解する上で意味があろう。 4.蒙古の襲来は、国家の危機として国家や王権への意識を顕在化させたが、そのことを明らかにするための基礎的な作業として、岩国徴古館蔵の『八幡宮愚童訓』の調査を行い、その位置づけと翻刻を行った。 なお、当初に目論んだ課題のうち、『神皇正統記』や『梅松論』、説話集などの検証は未だ見通しの域を出ていないので、これらについては今後の課題としたい。
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Research Products
(4 results)