2005 Fiscal Year Annual Research Report
明治文学の<批評>概念成立におけるドイツ美学受容の意義
Project/Area Number |
16520100
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
林 正子 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (30198858)
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Keywords | 批評 / ドイツ哲学 / 大西祝 / 高山樗牛 / 姉崎正治 / 森鴎外 / 金子筑水 / 桑木嚴翼 |
Research Abstract |
本年度=平成17年度は、別項「研究発表」〔雑誌論文〕に挙げた論文「明治中後期から大正期にかけての評論におけるドイツ思想・文化受容の系譜【概論】」をまとめた。本論文の構成は、「一、明治期の<批評>概念成立の経緯」(一)十九世紀イギリス・フランスに於ける批評概念とドイツ美学 (二)明治二十年間の批評論の展開 (三)大西祝「批評論」の本領 (四)高山樗牛の<批評>観 「二、ドイツ文明批評による日本文明輪の展開」(一)総合雑誌「太陽」におけるドイツ思想・文化受容 (二)高山樗牛のニーチェ礼賛 (三)姉崎正治のドイツ文明批判 (四)森鴎外による樗牛・姉崎評論への批評 「三、<生の哲学>の受容と<大正生命主義>として発露-樗牛・嘲風から大正評論へ」 「四、<新理想主義>受容の様相」(一)森鴎外の<文化>認識とオイケン受容 (二)金子筑水のドイツ思想・文化受容と近代日本精神論 「五、<文明>論からの<文化概念>定立の契機」(一)<文明開化>から<文化主義>へ (二)桑木厳翼の<文化主義>。明治中後期から大正期にかけて移入されたドイツ思想・文化が、当時の知識人たちに、<国民文化>構築の重要性について認識させ、その発展に寄与させた様相を確認した。すなわち、近代日本におけるドイツ思想・文化受容とその表現形態や発展の軌跡そのものに、当時の国情や知識人の意識が反映すると同時に、ドイツ思想・文化受容の成果そのものが<国民精神>の基盤を構築することによって、相互の響き合いによる国民文化の価値創造を実現させたことを論じたのである。今年度、十分に展開することができなかった、ヘルダー、ゲーテ、カント、シェリング、ヘーゲル、シュレーゲルらの批評概念の考察を進め、上記の近代日本の知識人による批評活動や概念規定への具体的影響について論じることを、次年度の課題として認識している。
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Research Products
(2 results)