2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520120
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山本 卓 関西大学, 文学部, 教授 (60230562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 圭一 大谷女子大学, 文学部, 教授 (90188003)
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Keywords | 実録 / 実録体小説 / 近世文学 / 写本 / 中村幸彦文庫 / 日本人の歴史観 |
Research Abstract |
平成16年度に引き続き、国文学研究資料館・国立国会図書館・国立公文書館・関西大学図書館(中村文庫)所蔵の実録体小説の調査を行った。国文学研究資料館所蔵全実録本については、そのすべての調査を終えた。関西大学図書館(中村文庫)については約6割程度、国立公文書館は約5割程度、国立国会図書館の約4割程度の調査を済ませた。残念ながら、京都大学・天理大学の調査は余り進捗しておらず、来年度の課題として残さざるをえない。 研究協力者に依頼した本村康哲氏を中心として、WEBでの公開に向けたデータベースを構築するための理論を討議した。その理論に基づき独自のデータベースソフト(枠組み)を開発し、各資料館・図書館での調査結果を順次データ入力している。現在は調査・データベース構築の中途であるが、経過報告として関西大学本村研究室のサーバーから試験的に発信しており、そのアドレスは、http://158.217.36.26となっている。 来年度中には中村文庫の調査を終えたい。本文庫は近世文学の泰斗中村幸彦博士がそのご見識により蒐集されたもので、その実録約200点は実録の全貌が明らかになる構成である。実録の全体像の好サンプルとして、来年度の報告書にデータを活字化して示すこととする。 これらの調査研究により、出版の時代と概観される日本の近世において、実は写本がメディアとして広範に享受されていた実態があきらかになりつつある。江戸時代のふつうの人々の興味関心を如実に反映しているのが、これら実録体小説の転化生長の種々相であり、実録体小説の目録を一覧すれば、その様子が概観できるのである。 日本人の常識としての<歴史>形成の過程をいささかながらも照射しつつあることに、深い感銘を覚えている。
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