2007 Fiscal Year Annual Research Report
アンジェロ・ポリツィアーノの人文主義・文献学に関する基礎的研究
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16520138
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
榎本 武文 Hitotsubashi University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (60232964)
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Keywords | ポリツィアーノ / 人文主義 / 文献学 |
Research Abstract |
平成19年度には,アンジェロ・ポリツィアーノの一次文献,すなわち諸『全集』本等の原本から転写したテクストを元に,内容の最終的な要約・分析解釈作業を行なった。その具体的な対象は,フィレンツェ大学における様々な「開講演説」(praelectiones)をはじめとした文献学的小篇である。そのために,平成18年度までに引き続き,ロンドンのブリティッシュ・ライブラリーにおいて文献調査・収集を実施した(2007年8月15日〜9月3日)。残念ながら,当初予定していた『雑録』(Miscellanea)第一集は,テクスト転写・要約・分析ともに時間切れのため「積み残し」となってしまった。これについては,今後研究を継続したい。平成19年度の研究成果として得られた知見は,1.ポリツィアーノの人文主義者・文献学者としての研究対象の変化・幅広さである。その対象は,初期のギリシア・ローマ詩人から,ローマの歴史家,プラトンやストア派などの哲学者を経て,後期のアリストテレス哲学にまでわたった。2.ポリツィアーノの人文主義者・文献学者としての自己認識である。フィレンツェ大学における後期の講義はアリストテレス文書を対象としたが,倫理学書,また殊に論理学書(「オルガノン」)を論じる際のポリツィアーノの態度は,一貫して「平明さ」・「明快さ」を重んじるルネサンス期人文主義のそれであり,ギリシア語原典の重視は文献学の原則に忠実なものである。3.最後期の講義PanepistemonおよびDialecticaには,学知全体を鳥瞰し総合しようとする百科全書的・「方法」的意識の萌芽が見られる。最後に,本研究課題の全体的な意義・重要性は,15世紀後半イタリア人文主義の代表的学者ポリツィアーノの人文主義・文献学的著作をラテン語原文によって包括的に概観し,統一的理解を試みたことにあると言えるだろう。ルネサンス期人文主義という歴史的現象の把握は,まず文献の精密な読解から始まるからである。
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