2005 Fiscal Year Annual Research Report
ジェイムズ・ラッキントンを中心とした18世紀末イギリス書籍商の研究
Project/Area Number |
16520140
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
内田 勝 岐阜大学, 地域科学部, 助教授 (00213447)
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Keywords | 書物史 / 書籍商 / 18世紀 / イギリス / ラッキントン / Lackmgton |
Research Abstract |
まずジェイムズ・ラッキントンの自伝、Memoirs of the Forty-Five First Years of the Life of James Lackington(初版1791年)およびThe Confessions of J.Lackington(1804年)を精読し、同時にラッキントンの著書が先行研究によってどのように扱われてきたかを検証しました。またその過程で、今回の科学研究費補助金で購入した「18-19世紀イギリス書物史関連図書」を活用し、この分野の先行研究で言及されているテキストを中心に、特にラッキントンの周辺に焦点を絞った資料の分析を行いました。 ラッキントンは、貧しい靴職人でありながら読書によって独学で幅広い教養を身に付け、のちにロンドンで書店を開業すると、売れ残り本の値下げ販売・薄利多売・現金取引のみという画期的な方針を貫くことで、他店に真似のできない徹底した安売りを行ない、店を急成長させた人物です。研究を進めた結果、ラッキントンが単に本を読みたい人に本を売るだけではなく、それまで本を読まなかった人に読書の喜びを教え、あらゆる階層の人々に本を広めることに執拗にこだわったのは、彼が傾倒していたメソジストの信仰によるところが大きかったのではないかという見解を得るに至りました。メソジスト運動の創始者ウェスレーは、金銭の使い方について「できる限り稼ぎ、できる限り蓄え、できる限り与える」ことを説いています。ラッキントンはこの考え方を、実際の金銭ではなく文化資本(=成り上がるための教養)に対して応用し、文化資本を「できる限り稼ぎ、できる限り蓄え、できる限り与える」ために生涯を費やしたと解釈できるのです。 研究成果は「読書の伝道者、ジェイムズ・ラッキントン」『岐阜大学地域科学部研究報告』第18号(2006年2月)pp.59-71として発表しました。
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