2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520145
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 宏幸 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30188049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中務 哲郎 京都大学, 文学研究科, 教授 (50093282)
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Keywords | 書簡文学 / 古典古代 / ギリシア文学 / ラテン文学 / アルキプロン / ピロストラトス / オウィディウス『名高き女たちの手紙』 / セネカ『倫理書簡集』 |
Research Abstract |
ギリシアの書簡文学には、書簡の形式を用いた哲学・倫理学あるいは自伝といった真の著作がある一方で、まったく虚構の書簡が存在した。それらは、(1)独裁者パラリス、哲学者ソクラテスとその弟子たち、とりわけプラトン、医師ヒポクラテス、悲劇詩人エウリピデス、等の名に帰せられるまったくの偽文書、(2)漁師や農夫、遊女や市井の人、といった特定の社会階層の人々による手紙の体裁を採った創作文学、(3)伝説や先行文学の内容を書簡体で再話する翻案文学、等に分類することができる。今年度中務は(2)のタイプの書簡文学に焦点を絞り、アルキプロン『漁夫の手紙』『遊女の手紙』を検討するかたわら、ピロストラトスの『恋文』と『エクプラシス集』を比べて、2,3世紀の文学潮流について考察した。 高橋はローマの書簡文学のうち、とくにオウィディウス『名高き女たちの手紙』を取り組みの中心に据えた。同作品は神話を題材として、特定の場面で登場人物が思いを寄せる相手に宛てて記した手紙という設定の上に書かれており、手紙の文面を通じて浮かび上がる人物造形の妙と、先行文学に語られた神話の展開を踏まえて、それとの微妙な相違、あるいは、手紙を書いている時点で登場人物には知られていないが読者は予備知識として知っている事柄への言及による効果などに特色が見出せる。近年、文学ジャンル、語りの構造、ジェンダーといった種々の視点から関心の高い作品であるが、全21歌のうち、部分的にしか邦訳されていないため、試訳を行いつつ、テキストに即した解釈に努めた。
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Research Products
(7 results)