2004 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス文学に対するオックスフォード運動の影響研究
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16520151
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野谷 啓二 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (80164698)
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Keywords | オックスフォード運動 / ジョン・ヘンリ・ニューマン / エラストゥス主義 / 『時局冊子』 |
Research Abstract |
平成16年度の研究目的は、『時局冊子』(Tracts for the Times)などの一次資料にあたり、オックスフォード運動初期の主張を明らかにすること、さらにはローマ・カトリシズムの信者となることを選択したJ.Hニューマンの宗教思想の展開を跡づけることであった。 オックスフォード運動の核心は、教会には「国家や国教制度から独立した、神から与えられた権威がある」という理念である。教会は国家に従属するというエラストゥス主義に対抗するために教会の権威を主張する。教会は人間が作った親睦団体ではなく、キリストを頭とする神秘体とみなされ、目に見える方法(秘跡)を通して、目に見えない神の恵みを与える、人間を聖化する共同体である。 オックスフォード運動は歴史的流れから言えば、国教会内部の高教会から出てきたものである。高教会の特徴は、教会を使徒継承の普遍教会とみなし、主教制度を廃止した改革諸教会は含まないとする教会観と、聖書の至上性を認めるが、カテキズム、信条、祈祷書、教父の著作も信仰の証しとして重んじるという点にある。教義の重要性も主張し、洗礼と聖体の秘跡を通して与えられる恩恵を強調した。オックスフォード運動には伝統的な高教会の教義に加えて、福音派に匹敵する宗教的まじめさがあった。この運動の中心にいたのがニューマンであり、彼は国教会のなかに使徒的伝統が受け継がれていることを確信し、国教会が宗教改革以前のキリスト教正統伝統としてのカトリック性を持つことを一般に想起させた。この運動は「国教制を支持する人々のエラストゥス主義と、国教制に反対する人々のリベラリズムに対して、使徒継承の権威の教義を立てて戦う反抗運動」であった。
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Research Products
(3 results)