2004 Fiscal Year Annual Research Report
十七世紀イギリスにおけるパンフレット出版と公共圏の形成
Project/Area Number |
16520160
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
小野 功生 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (80194588)
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Keywords | 公共圏 / パンフレット出版 / プロテスタント国家意識 / 宗教論争 / スメクティムニューアス論争 / ブリテン史 / スコットランド長老派 / アイルランド反乱 |
Research Abstract |
本研究は、ローマ・カトリックの脅威を背景として生まれたプロテスタント国家意識の形成過程が、政治・宗教論争、海外ニュースの報道、商業出版の発展にどのように影響を与えたのかに焦点を合わせながら、十七世紀のパンフレット出版を通観して、パンフレット出版がその成立の重要な部分を担った公共圏がどのような性格をもっていたのかを明らかにすることを目的とする。研究は一次資料の収集と分析を中心として行なわれ、平成16年度は主として1649年の国王チャールズ一世処刑までを取り扱った。 十六世紀末のマープレリット論争にはじまる宗教論争の誹謗中傷的性格とそれが公共圏の形成に及ぼした影響については、1641年のスメクティムニューアス論争に焦点を合わせながら当時の社会情勢とも関連させて論じ、その成果を日本英文学会第76回大会シンポジウム第1室「公共圏の文学史」(大阪大学 2004・5)において発表した。また、イングランド一国史への反省からブリテン史の重要性が主張されるようになって、イギリス革命をもたらすうえで大きな影響力をもった事件として、1637年のイングランド国教会の祈祷書強制に端を発したスコットランドとの戦いと1641年のアイルランド反乱が取りあげられることが多い。この二つの事件は実は出版文化史のうえでも非常に重要な契機となっており、スコットランド長老派教会との微妙な関係とアイルランドのカトリック教徒へのあからさまな憎悪を比較対照しながら、1649年の国王処刑にいたるパンフレット出版における政治宗教論争の有り様を探った。さらに、このようなパンフレット出版を歴史的に定位させるにあたって、十七世紀の革命をどのように捉えるかという歴史観についての理論的基礎的研究も並行して行った。
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Research Products
(1 results)