2006 Fiscal Year Annual Research Report
十七世紀イギリスにおけるパンフレット出版と公共圏の形成
Project/Area Number |
16520160
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
小野 功生 フェリス女学院大学, 文学部英文学科, 教授 (80194588)
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Keywords | 公共圏 / パンフレット出版 / プロテスタント国家意識 / 宗教論争 / 帝国意識 / スコットランド長老派 / 対話 / ロータ・クラブ |
Research Abstract |
本研究は、17世紀のパンフレット出版を通観して、パンフレット出版がその成立の重要な部分を担った公共圏がどのような性格をもっていたのかを明らかにすることを目的とする。研究は一次資料の収集と分析を中心として行なわれ、平成18年度は、(1)17世紀宗教論争の範型となった1570年代の「勧告論争」にさかのぼって、その論争の特徴を検討する、(2)三王国関係における他者表象と国民国家意識の関係をスコットランドに焦点を合わせて追究する、(3)王政復古期のサークルやクラブの活動から生まれたパンフレットの言説を分析する、という三つの課題に取り組んだ。 (1)カートライトとホウィットギフトのあいだで戦わされた「勧告論争」の言説的特徴を析出することで、この論争がピューリタニズムをめぐる最初の宗教論争として、マープレリット論争や、17世紀のスメクティムニューアス論争に及ぼした影響について、さらにはそれが公共圏の形成に及ぼした影響については、その成果を「勧告論争を読む」というタイトルで「宗教とテューダー朝演劇の成立」第7回研究会(慶應義塾大学日吉キャンパス・2006年6月10日)において発表した。(2)アルスター植民を焦点としたイングランドとスコットランド、アイルランドの複雑に入り組んだ関係と、帝国主義的発想が公共的言説にもたらした影響については、『<帝国>化するイギリス-- 一七世紀の商業社会と文化の諸相』に「文明から野蛮へ--スコットランド、アイルランドとブリテン帝国の起源」(pp.132-163)という標題で発表した。(3)王政復古期のサークルやクラブを発信源とする言説と公共圏の関係については、『食卓談義のイギリス文学--書物が語る社交の歴史』に「共和主義サークルという記号--ロータ・クラブからカーヴズヘッド・クラブへ」(pp.137-182)という標題で発表した。
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Research Products
(3 results)