2004 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀末ドイツの思想シオニズムに英国文化はどのように関っているか
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16520181
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
度會 好一 法政大学, 国際文化学部, 教授 (00054338)
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Keywords | パレスチナ / ユダヤ人 / 千年王国論 |
Research Abstract |
今年度の研究で明らかになったのは、HerzlがDer Judenstaat(1896)を発表する以前から、イギリスでは300年間の長きにわたって、ユダヤ人がパレスチナに復帰するという思想がれんめんと語りつがれてきたということである。それは、聖書の預言の実現として、神秘なる神のわざとして語られたのがきっかけだから、熱烈なピューリタンだったMiLtonのParadise Regained(1671)にあらわれても不思議ではないが、科学者や啓蒙主義哲学者にもあらわれるのは、何とも驚いた光景である。John Locke, A Paraphrase and Notes on the Epistles of St Paul(1705-7),Newton, Observations upon the Prophecies of Daniel and the Apocalypse of St John(1733),Hartley, Observations on Man(1749)といった具合である。キリストの神性を否定したJoseph Priestleyも熱心な復帰論者だった。この思想に大きな変化があらわれるのは、19世紀の初頭、パレスチナを直接見聞したイギリス軍の青年将校のあいだからである。代表はChurchillのMount Lebanon(1853)で、オスマントルコの崩壊のあと、イギリス領かあるいは新独立国家の一部としてのパレスチナが想像されている。このような巨視的視野でみると、George Eliot, Daniel DerondaやOliphantの思想の性格がいちだんと明確になってくる。
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