2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520200
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松本 肇 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (40128814)
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Keywords | 悲愁 / 快楽 / 悪意 / 反世界 |
Research Abstract |
本年度は、孟郊の文学についての研究を行い、以下のような結論を得た。 1、賢者の処罰 孟郊の「罪松」と題する詩を対象に、賢者として讃えるべき松を処罰するのは、松の正しさを逆説的に証明する方法であり、そこに孟郊の自虐的な態度が表れていることを論じた。 2、快楽としての悲愁 孟郊と賈島における困窮の表現には、悲愁の情を楽しむという認識が見られる。つまり、悲愁を快楽にまで高めたところに孟郊の功績があることを論じた。 3、悪意の文学 「寒地百姓吟」を対象に、孟郊が幻想の中でも死を求めることを明らかにし、孟郊の文学が悪意の文学という一面を持っていることを論じた。悲愁と悪意はともに快感に通じるので、両者は表裏一体の関係にある。 4、詩人の使命 孟郊における詩作の意味について考察した。孟郊がことばによって人工の世界、つまり反世界を創造したこと、反世界の創造は、天に対する反逆行為であり、反逆者には代償が求められること、孟郊が詩という牢獄の中にみずからを閉じこめたのは、みずからを処罰する行為であり、それが反世界を創造するための重い代償であったことを論じた。 5、孟郊と賈島 孟郊は、五言古詩を得意とし、賈島は、五言律詩を得意とした。両者の違いは、詩によって何を表現するかという意識の違いに基づいている。孟郊は作詩を通じて、世界を変革しようと試みた。そのために、動的で饒舌な古詩を必要とした。一方、賈島は作詩を通じて、静謐な世界の美を表現しようとした。そのために、静的な律詩を必要とした。両者の差異は、世界観の差異でもあった。 孟郊と賈島の二人は、いわば両者一体の関係にあると言える。
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Research Products
(1 results)