2007 Fiscal Year Annual Research Report
日英語の名づけのメカニズム:可能な語に関する制約の普遍性と言語間、範疇間の差異
Project/Area Number |
16520239
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
由本 陽子 Osaka University, 大学院・言語文化研究科, 教授 (90183988)
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Keywords | 語形成 / 概念構造 / 特質構造 |
Research Abstract |
今年度は、ます英語の名詞から動詞を形成するゼロ派生と呼ばれる語形成において、名詞の意味のうちどのような情報が動詞の形成を可能にし、またいかにその統語的性質が決定されるかについて概念構造と特質構造による形式化を試みた。分析の成果として、名詞の意味情報としてもっとも顕著なもの、すなわちその語が表す指示対象を他から区別する情報が、特質構造において概念構造により表示されるようなものである場合には、その概念構造がそのまま派生動詞の語彙表示として利用されるため、そのような名詞から動詞へのゼロ派生は生産性が高いことが明らかになった。たとえば、道具として作られたモノを表す名詞には、特質構造中その目的を記した「目的役割」と呼ばれる情報が最も顕著であり、それは概念構造によって表される何らかの行為、すなわち動詞概念であるから、道具名詞からの動詞派生は非常に生産性が高いのである。このように本来概念構造をもつとは考えられない名詞を基盤とした述語形成を説明するには、特質構造と概念構造を併せ持つ語彙表示システムが必須である。また、今年度は、本プロジェクトの最終年度に当たるため、日英語における動詞や形容詞・形容動詞の形成について以下のような結論を導き、その成果を国内外の学会において発表した。 1.語形成には、統語構造や項構造を基盤にしたもののみならず、基体の概念構造や特質構造を基盤としたものもあり、語形成の多様性やダイナミックなシステムは、モジュール形態論の仮説によってのみ説明できる。 2.語形成には、その形成の基盤が統語構造であろうが語彙意味にあろうが、統語的制約と意味的制約の両方が関わり、その連携により語形成の生産性や新造語の容認性の差異が説明される。これはJackendoffの理論のように、語彙意味の構造と形態統語構造とがそれぞれ自律性をもち構築されるとする文法モデルによってのみ扱うことができる問題である。
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Research Products
(4 results)