2004 Fiscal Year Annual Research Report
現代ドイツ語の助動詞構文・機能動詞構文の機能論的類型論的意義に関する研究
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16520242
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
湯淺 英男 神戸大学, 国際文化学部, 助教授 (00136285)
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Keywords | ドイツ語 / 助動詞 / 本動詞 / 文法化 / 題目 / 主語 / 情報伝達構造 / 受動態 |
Research Abstract |
本年度においては、ドイツ語の助動詞構文が「主語+述語」の統語構造及び「題目+解説」の情報伝達構造とどのように関わるのかを、bekommen-受動態を中心に分析した。当該構文「bekommen+対格目的語+過去分詞」については、Haider(1984)がbekommenの語彙的意味「得る」が依然失われていないとし、通常の能動文として規定したのに対し、Reis(1985)は統語理論的に反証し、一部の構文を除き受動態としての正当性を主張した。さらにHaider(1986)ではReisの論証を容認しながらも、bekommenの受動態助動詞としての性格をあくまで否定し、本動詞と助動詞の間に位置する「寄生的動詞」と呼ぶ統語的地位をbekommenに付与した。この寄生的動詞は、zu-不定詞と結合し一文的結束構文を形成するversprechenのような動詞と近い。いわばbekommenは、語彙的形式から文法的形式へ到る過渡的形式と見ることもでき、「寄生的動詞」の概念は文法化の問題への一石とも見做せる。 他方で当該構文の過去分詞にwegnehmen(取り去る)、stehlen(盗む)等が用いられることから、bekommenの受動態助動詞化も否定できない状況となっている。機能論的背景としては、Eroms(1978)の指摘するような「受け手」の主語化と題目化が挙げられる。Eromsでは主語化=題目化の根拠が明確でないが、英語に見られるような主語の文頭(あるいは前域)への配置がドイツ語においても傾向として見られること、及び題目が元々情報伝達上文頭に来ることの二つの事実によって、「受け手」=主語=題目が促され、bekommen-受動態が生成されつつあると見做せる。また当該助動詞構文の統語構造は、Li/Thompson(1976)の言う題目優位型言語(例えば、日本語、中国語)が持つ二重主語構文「NP+NP+V」に近接しており、ドイツ語の題目優位型言語への接近も推測される。
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