2005 Fiscal Year Annual Research Report
現代ドイツ語の助動詞構文・機能動詞構文の機能論的類型論的意義に関する研究
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16520242
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
湯淺 英男 神戸大学, 国際文化学部, 助教授 (00136285)
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Keywords | ドイツ語 / 完了時制 / 言語変化 / 情報伝達構造 / 機能動詞構造 / 機能動詞 / 動詞的名詞 / 拡張形 |
Research Abstract |
本年度は、ドイツ語の完了時制生成の文法的要因及び言語変化と世代間コミュニケーションとの関わり、さらには機能動詞構造の使用に関する文法的機能論的理由について考察した。完了時制は、動詞的意味を持つ過去分詞が文末に来る構造のため、「題目+解説」といった情報伝達構造にも大きく関わる。嶋崎(2003)によれば、9世紀に文献に現われた「haben+過去分詞」のhabenが「所有」の意味を失うのは、知覚動詞等の心的活動を表わす動詞の完了が関与している。だがむしろ、対格目的語における「具体的名詞→代名詞→ゼロ(ないし補文形式)」といった歴史的推移の方が、habenの「本動詞→助動詞」の機能的変化にとっては重要であろう。またDisterheft(1990)を手掛かりにすれば、言語変化が世代間コミュニケーションの阻害を招かないのは、年輩者の言語を規範的に捉える「仮説的推論」への圧力が徐々になくなり、そのことでゆるやかな変化が進行する、Andersen(1973)の「適合的変化」のためとされる。しかし完了時制の生成など、言語形式の再分析による変化は、これとは別のタイプの変化と見ることもできよう。 機能動詞構造については、主として文法的機能を担う「機能動詞」と、文末に位置する動詞的名詞を含む前置詞句、あるいは動作名詞単独の対格目的語の組み合わせによって成る。文末の要素は、文法的に見れば、助動詞と結合する不定詞あるいは分離前綴りと統語的に平行する。また機能動詞構造全体として受動的意味を持ったり、起動相など様々なアスペクト的意味を担う。さらにHelbig(1979)の言うように、「題目+解説」という情報伝達上の機能的分節にも寄与する。つまり機能動詞構造は、単なる単一の動詞の「拡張形」、すなわち言い換えではなく、多様なコミュニケーション上の機能を果たしえる独自の形式として位置づけられる。よって、初期新高ドイツ語などにもすでに同種の構文は散見される。
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