2006 Fiscal Year Annual Research Report
現代ドイツ語の助動詞構文・機能動詞構文の機能論的類型論的意義に関する研究
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16520242
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
湯淺 英男 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (00136285)
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Keywords | ドイツ語 / 機能動詞構造 / 副詞 / 日本語 / オノマトペ / 付加語的形容詞 / 類型論 / 構文論 |
Research Abstract |
本年度は,「語彙的意味を失い機能的意味を持つようになった動詞」(第2番目の位置)と「動詞的意味を担う名詞句」(文末)との組み合わせの観点からドイツ語の助動詞構文の一つとも見做せる機能動詞構造を手掛かりに,機能論的類型論的立場からドイツ語と日本語の構文上の比較を行なった。そこでは機能動詞構造への変換に際し,ドイツ語の通常の動詞を用いた構文における副詞が,どのように文法的に扱われるかを問題とした。つまり,当該の機能動詞構造への変換時に,副詞の変換先である付加語的形容詞(動詞的名詞に対しての)が,文法的に出現を制限されていることに注目した。このことから,ドイツ語は構文類型論的に見ると,客観的な「事態核」(Polenz 1963)を中心とした構文であり,副詞の立場も構文論的に低いことがわかる。それに対し日本語においては,例えば様態副詞の典型としてオノマトペも多用される。また同時にこうしたオノマトペは,必ずしも十分には意味論的差別化がなされていない動詞の役割を,意味論的に補完している。つまり日本語では,構文類型論的に見て,副詞の立場は高い。このことは複合名詞においても,「よちよち歩き」や「ザーザー降り」など,「副詞+動詞的名詞」の組み合わせが,ドイツ語などに比べてはるかに多いことでも証明される。 以上のように,ドイツ語機能動詞構造の文法的特性を手掛かりに,類型論的にドイツ語と日本語の構文を比較すると,副詞的要素に限ってみても,両語の間の明確な構文的差異が浮かび上がってくる。上記の考えは,平成18年度日本独文学会秋季研究発表会でも発表し,多くの有益な反応を得ることができた。
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