2004 Fiscal Year Annual Research Report
キナウル語の現地調査による記述および形態統語論的研究
Project/Area Number |
16520250
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
高橋 慶治 愛知県立大学, 外国語学部, 助教授 (20252405)
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Keywords | チベット・ビルマ語派 / チベット・ヒマラヤ諸語 / キナウル語 / 動詞 / 形態統語論 / 現地調査 / 再帰形 / 相互形 |
Research Abstract |
本研究は、チベット・ビルマ系言語に属するキナウル語の記述的研究を行うものであり、本課題の1年目である。 本研究は、現地調査に基づく記述的研究であるが、今年度は、報告者が参加している「チベット文化圏における言語基層の解明-チベット・ビルマ系未記述言語の調査とシャンシュン語の解読」(基盤研究S、#16102001、代表者長野泰彦国立民族学博物館教授)による現地調査を年度末に予定しており、本報告書作成時点では現地調査の準備中である。(なお、本研究による海外旅費は、ブータンで行われた第10回ヒマラヤ諸言語シンポジウムに参加し成果を発表するための旅費に充当した。)したがって、今年度は、主として昨年度まで交付されていた科学研究費補助金(「キナウル語の記述および形態統語論的研究」#12610556)により収集された資料の整理、分析を行った。 この分析に基づき、過去を表す動詞接尾辞に含まれる2種類の母音-a-,-e-は、reflexive/reciprocalを表す接尾辞-s-に後続したとき-e-が現れることから、-a-が基底の形式でありと考えた。そこで、キナウル語における他の音韻現象をも考慮に入れたとき、これまで-s-と考えてきたreflexive/reciprocalを表す接尾辞を-siまたは-syと分析しなおすと、過去を表す動詞接尾辞の母音のうち-e-は、-iまたは-yと-a-が融合してできた形式であると言える。 また、reflexive/reciprocalの接尾辞を-siまたは-syと考えることは、ヒマラヤ地域の諸言語の形式を見ても、妥当な分析と考えられる。 なお、この点については、不十分ながら、上記の科学研究費補助金(#12610556)の報告書にその考えを示してある。また、上記の第10回ヒマラヤ諸言語シンポジウム(10th Himalayan Languages Symposium, Thimphu,2004/12/1-3)で口頭発表した。
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