2006 Fiscal Year Annual Research Report
敬語の語用論研究-理論的枠組の構築と用例調査による検証-
Project/Area Number |
16520255
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
滝浦 真人 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (90248998)
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Keywords | 敬語 / ポライトネス / ほのめかし / ダイクシス / 終助詞 |
Research Abstract |
最終年度に当たる今年度は、敬語とポライトネスをつなぐ語用論的枠組の有効性を検証すべく、日本語(標準語)だけでなく、方言の待遇体系や他言語(韓国語)にまで範囲を広げながら、各論的に研究を進めた。 これまでの研究で、敬語やポライトネスにおいて表現されるのが対人的な<距離>であるとの見通しを得ていたが、実際どのような言語形式と言及内容との相関において発話効果が生じるかについては、多くの各論的な考察が必要となる。今年度は主に次のような観点から考察を行なった。 ・敬語の使用が人間関係をウチ/ソトに分け、時として対象者を疎外する働きをもつことについて、待遇法の体系が異なる場合に生じる差異を、標準語と方言(京都)、日本語と韓国語を対照しながら考察した。 (=滝浦[2007]) ・敬語やポライトネスによる表現効果を対人的<距離>の相の下に捉えたとき、言語形式において表現される距離と言及内容において表現される距離とが、どう組み合わさって言語表現全体の効果を生じさせるかについて、日本語と韓国語を対照しながら考察した。 (=発表「<距離>と<領域>の語用論-日韓対照ポライトネス論の試み-」2006.6.24,於・成践大学) ・日本語の終助詞が対事的・対人的<距離>を表現する専用の手段であるとの仮説に立ち、「か/よ/ね」の意味機能とポライトネス的機能について、対事的/対人的モダリティーの観点から考察した。 (=発表「終助詞『か/よ/ね』の意味機能とコミュニケーション機能-モダリティーとポライトネスの観点から-」(2007.2.28,於・麗澤大学、論文として投稿予定) ・ネガティブ・ポライトネスのストラテジーとされる「ほのめかし」について、話し手と聞き手各々にかかる負荷の観点からゲーム理論的に考察し、それが「ポライトネス」だけでなく「責任回避」のストラテジーともなるメカニズムを解明した。(=滝浦[2006]) 以上の研究により、<距離>の語用論の大枠は明らかにできたのではないかと考えている。
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