2005 Fiscal Year Annual Research Report
EUにおけるドイツ語の地位-複数のドイツ語標準変種とEUの言語政策
Project/Area Number |
16520268
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高橋 秀彰 関西大学, 外国語教育研究機構, 教授 (60296944)
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Keywords | ステータス計画 / コーパス計画 / 記述主義 / 規範主義 / 言語規範 / ドイツ語 / 言語政策 / 標準変種 |
Research Abstract |
本年度はドイツ語コーパス計画の分析として、ドゥーデン発音辞典を中心に変異形の分析を行った。実証研究により実際の言語使用を抽出しようとしても、多様な変異形が観察されるばかりであり、辞典編纂のためには標準として相応しい形式を選別する作業が不可欠である。そこで規範主義と記述主義を峻別する要素は、前者が言語の純粋性や伝統を保持する目的を持つのに対して、後者は現実の言語運用を反映することを目的としている点にあることを論文中で指摘し、本年度の研究の出発点とした。 ドゥーデン正書法辞典やUniversal worterbuchは、記述主義的視点を重視して、変異形も国・地域を明記して収録しているが、ドゥーデン発音辞典は国・地域を一切記述しないまま変異形も収録している。この点はEUにおけるドイツ語のステータス計画を考える上で重要である。EUでドイツ語が作業言語として使用されるためには、リンガフランカとしての機能性を高めるためにもドイツ語の多様性より統一性の方が重要になるからである。以上の辞典の規範性に関する問題と、変異形の記述様式にの分析結果を日本独文学会研究叢書で発表した(2005年10月出版)。なお、緻密な実証研究に基づいて変異形を記述しているVariantenworterbuch des Deutschuen(U.Ammon et al.,2004)については書評で考察した(『ドイツ語教育』(日本独文学会ドイツ語教育部会)2006年出版予定)。さらに、ドイツとの相違を浮き立たせるためにコーパス計画を通じて標準変種の確立に取り組んでいるオーストリアの二面的な言語政策は、複数中心地言語としてのドイツ語の中で、周辺的地位に甘んじている立場を反映していることを、日本言語政策学会大会で口頭発表により報告した(2005年11月19日)。
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Research Products
(1 results)