2005 Fiscal Year Annual Research Report
古代日本語における述語形容詞化用法としての名詞修飾機能に関する統語構造論的研究
Project/Area Number |
16520276
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
釘貫 亨 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (50153268)
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Keywords | 受け身助辞 / ボイス / 名詞修飾 / 形容詞的用法 / 自動詞と他動詞 |
Research Abstract |
本年度は、奈良時代語における動詞の名詞修飾の用例のうちからタリに接する用例を求めて奈良時代語資料全般、平安時代語訓点資料と平仮名文芸作品、鎌倉時代語の文芸作品に調査対象を拡大して大規模な調査を行った。その結果、タリを伴いながら名詞修飾する動詞は、奈良平安時代の資料においては自動詞に偏る傾向を見せるが、鎌倉時代に至って名詞修飾する動詞では他動詞が自動詞を上回るという逆転現象が認められる。この事実は、古代語の段階において日本語の名詞修飾においてタルを標識とした形容詞的用法に相応しく状態的意味を持つ自動詞に偏る傾向を見せたが、助辞タリが古代語における「タル名詞」に密集分布する状況から次第に文法的機能を高めて多様な文脈に用いられた結果、広く他動詞にも接するようになったことが明らかになった。この事実の報告と評価に関する論文を現在鋭意執筆中であり、最終年度中において口頭発表と論文公表を行う予定である。 奈良時代語において文法的機能の貧弱さのために有効な働きをなしえなかった受け身助辞ユ・ラユに代わって平安時代ではル・ラルが活発な働きを実現するに至って日本語のボイスの体系が完成したことを解明した。その結果、受け身句「設けられタル調度」のごとき他動詞を資源にした名詞修飾が漢文訓読語脈の助けによって国語文脈に姿を現したことを明らかにした。しかし平安時代の段階ではこれらの句は未だ格関係を離脱するには至らず、純粋な形容詞的法である「魅せられタル魂」のごとき表現は明治以後の欧文脈の影響かと考えられるが、この点も併せて最終年度において明らかにしたい。
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Research Products
(3 results)