2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国語口語との関わりを中心とした中世の仮名法語と禅宗抄物の文体史的研究
Project/Area Number |
16520278
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
李 長波 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 講師 (60293932)
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Keywords | 仮名法語 / 中国語口語 / 訓点語 / 文体意識 / 比較文体史 / 翻訳書 |
Research Abstract |
本年度は、『正法眼藏』(七十五巻本)に、説示年代がはっきりする他七巻を含む全八十二巻の電子テキストの校訂を終了し、更に、各種の文体指標の中から、特に中世仮名法語における、中国語口語の「動詞+数量詞」の受容、「動詞+来」の語法の受容を中心に研究を進めた。その中で、『正法眼藏』においてこれらの中国語口語の受容が非常に多様な形式が用いられているのに対し、『愚管抄』やその他の中世仮名法語(夢窓疎石の『夢中問答集』、『谷響集』、『月庵和尚仮名法語』など)では、これらの表現が限定的な使用に留まることに注目し、道元禅師は、広く平安時代の訓点語彙や同時代の禅宗語録などの漢文訓読体的な語法だけでなく、更に禅師自身渡宋時に身につけた中国語口語の運用能力によって多種多彩の表現を意識的に用いることに苦心していたことを明らかにした。それに平行して、近世、近代における「的」の受容に、荻生祖徠訓点本『六諭衍義』が大きな役割を果たしたこと、近代における「的」の受容の過程では、山成哲造譯『和氏授業法』,明治十二年三月文部省印行(原本:A. Holbrook The Normal : or Methods of Teaching,1869.)における「的」の用例を網羅的に調査した結果、訳語「的」が更に「〜様」、「〜上」などと競合関係にあったことを示す用例を発見した。本書は、内容的にはほとんどすべての学問の分野に及び、学術用語の訳語が数多く含まれており、明治十四年刊の『哲學字彙』に先行するものとして重要であることを明らかにした。
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Research Products
(2 results)