Research Abstract |
平成16年度は,日本語母語話者の文理解のメカニズムを明らかにするために,5種類の文の語順のかき混ぜによる文理解時間の遅延および正答率の低下を測定した(Koizumi & Tamaoka,2004;Tamaoka, et al.,2005)。また,日本語の名詞句の構造,漢字形態素,音韻に関する一連の日本語コーパスを使用した基礎研究および実験を行った(Tamaoka & Altmann,2004;Tamaoka & Makioka,2004 and 2004b;Tamaoka & Terao,2004;Tamaoka, Lim & Sakai,2004;Tamaoka, Makioka & Murata,2004)。これらの研究をもとに,中国語を母語とする上級日本語学習者24名に対して4種類の文と2種類の名詞句について実験を実施した。また,母語でも語順が自由である韓国語の場合は,日本語の語順の違いが比較的容易に克服できるのではないかと思われる。まず,韓国語の二項および三項動詞を含む能動文を使って,日本語と同じようなかき混ぜ語順の影響があるかどうかを確かめた。その結果,韓国語でもスクランブル効果を観察することができた。そこで,韓国語を母語とする日本語学習者についても,日本語の文および名詞句の実験を行った。さらに,トルコ語を母語とする日本語学習者についても,二項動詞および三項動詞の能動文,受動文,可能文,特殊な受動文の5種類の文において,日本語と同様にスクランブル効果が観察された。さらに,トルコ語には,「主語編入」という現象があるという主張が展開されているが,それについても実験を行った。その結果,「擬似編入」を支持する結果を得た。今後,トルコ語を母語とする日本語学習者を対象として,日本語の文の語順の影響に関する実験を行う予定である。
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