2005 Fiscal Year Annual Research Report
言語間におけるライティング能力の双向性に関する研究:L2からL1へ
Project/Area Number |
16520343
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小林 ひろ江 広島大学, 総合科学部, 教授 (50205481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
リナート キャロル 広島市立大学, 国際学部, 教授 (20195390)
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Keywords | レトリック / ディスコースモード / 議論文 / サポート / L2ライティング / L1ライティング / 海外留学体験 / テクスト構築 |
Research Abstract |
17年度は、研究実施計画にそってデータ収集を継続する一方、国内外での研究発表を通して、言語間におけるライティング能力(特に修辞的特徴)の双向性について理論化を試みた。 まずデータに関し、16年度と同様の方法にて、計11名(海外留学経験者3名、非経験者8名)から日本語と英語エッセイおよびインタビューデータを収集し、16年度のデータ10人分と併せて分析した。この分析はまだ完了してはいないが、以下の傾向が見られた:(1)前回の研究(大学1年生を対象)と同様に、3、4年生によるL1とL2ライティングにも両言語によるポジティブな相互作用があるが、大学1年生と比べると、英語ライティングの影響が大きい、(2)英語ライティングの修辞的特徴(意見表明、反論を含む論理構成、トピックセンテンス等)のL1への転移には様々な要因が影響する。例えば、英語ライティング訓練/経験、日本語小論文訓練/経験の程度、海外留学志望の有無、英語能力レベル等である。海外留学は、L2ライティングについてのメタ知識獲得と授業レポートなどの実際的なライティングを通して、その知識のスキーム化に役立つ一方、L1への転移には個人の動機や見方など情意的要因の影響も見逃せない。 前回((L1からL2へ)と今回(L2からL1へ)の研究結果を併せて考察すると、転移の双向性には以下のような諸要因があると考えられる:(1)L1とL2ライティング訓練/経験の内容と量(メタ知識とスキーマ化に関連)、(2)ライティングが行われるソーシャル・コンテクスト、(3)個人の内的要因(L1とL2ライティングの見方、好み、価値観)(4)英語能力。特に、個人の内的要因は、L1とL2ライティング訓練/経験から強く影響を受けており、テキスト構築における修辞的特徴の選択/決定に大きな役割を果たしている。 18年度は、長期海外留学経験者や帰国子女からデータを収集し、現在までに収集したデータと比較分析し、L1とL2ライティング能力の転移の双向性にかかわるパラメーターをより精査していく予定である。
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