2004 Fiscal Year Annual Research Report
近世北日本における地域市場の形成と変質過程に関する研究
Project/Area Number |
16520380
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
渡辺 英夫 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (20191786)
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Keywords | 北日本 / 地域市場 / 流通 / 交通 / 海運 / 地域間交流 |
Research Abstract |
平成18年度までの3ヶ年にわたる研究計画の初年度にあたり、本年度は次の通り現地調査を実施し、関連史料の収集に務めた。 北海道立文書館ならびに北海道立図書館への調査では、近世蝦夷地の産業・経済・地理情報に関する各種の史料を調査することができた。そして、18世紀末以降、江戸幕府は接近するロシアの圧力に備えアイヌの人々の和人化を図り、蝦夷地の実質的支配に功を奏すべく様々な政策を展開した。政治的には蝦夷地を直轄して内国化を図り、軍事的には東北諸藩の蝦夷地警備によつてロシアの脅威に備えようとした。松平定信の政権以降、それらへの経済的裏付けを漁業を始めとした蝦夷地産業に求めるため、幕府は北方世界に関するあらゆる方面の情報を収集した。その成果の一部が現在国立公文書館内閣文庫に保管されている。同館での調査は、こうした幕府政策の一端を解明する糸口をつかむものであり有益であった。松前藩の場所支配とそれの商人請負方式は重要であり、有力な請負商人であった伊達屋、伊達林右衛門家の膨大な経営史料が、北海道大学附属図書館北方資料室と北海道立図書館に保管されていることもわかり、今後の研究の指針となる。 また、蝦夷地を核とする日本海交易の経済構造においては北日本社会が個々に重層的な経済関係をもつて交流していたおり、そうした観点から、荘内藩鶴岡の大山酒に焦点を絞って史料調査をおこなった。上方の中央市場を向かずに地域社会の中に市場を確保し、その需要に応えた酒造業の在り方が解明されるものと期待される。そして反対の大平洋側では、江戸の巨大市場との関わりにおいてどのような地域経済を成り立たせていたのか、この点を解明すべく八戸藩関係史料の調査も実施した。
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