2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520412
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小松 香織 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教授 (10272121)
|
Keywords | オスマン帝国 / 海軍 / 海運 / エスニシティ / 地域性 / ムスリム / 黒海 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近代オスマン帝国において海洋活動にたずさわった人々の「エスニシティと地域性」を分析することにより、オスマン帝国末期の社会構造を「ヒト」を核として捉え直そうとすることである。具体的には、海洋活動を、(1)官営汽船、(2)民間海運、(3)海軍の3つのカテゴリーに分類し、それぞれについて「ヒト」の記録を出来るだけ丁寧に掘り起こすというものである。本年度は昨年度に引き続きトルコでの一次史料の収集を行った。 (1)について、トルコ海運公社が所蔵する『給与台帳』史料のうち107、108巻の2冊から1905年のデータを記録した。これでオスマン帝国期に関してはほぼ数年に1度の割合で数値を照合しうるだけの材料がそろった。(2)について、総理府オスマン朝文書館所蔵の『船舶運航許可台帳』から、近世における黒海航路商船の船長の出身地と乗組員のムスリム、非ムスリムの内訳にかんするデータを収集した。(3)については、イスタンブルの海軍博物館付属歴史文書館所蔵の近代オスマン海軍の人事記録の調査を開始した。まず総カタログから海軍軍人の出身地にかんするデータを抽出し数量的概要を把握した後、個別の台帳を閲覧することによりデータの精度を高めていった。この作業は引き続き次年度も行う予定である。(1)から(3)に共通する地域性の問題について、本研究の焦点となるのは黒海沿岸地方であるため、その中心地トラブゾンで現地調査を実施した。黒海工科大学、市立図書館等でこの地域の歴史、地理、文化等にかんする文献を収集するとともに、実際に市街地や港湾をおとずれ聞き取り調査も行った。 以上の結果収集した史料、文献、情報を分類・整理して、オスマン海運・海軍に多数の人材を供給した黒海沿岸地方の地域性を明らかにするためのデータ・ベースを構築する作業をすすめている。
|