2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520412
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小松 香織 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 助教授 (10272121)
|
Keywords | オスマン帝国 / 海軍 / 海運 / エスニシティ / 地域性 / ムスリム / 黒海 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近代オスマン帝国において海洋活動にたずさわった人々の「エスニシティと地域性」を分析することにより、オスマン帝国末期の社会構造を「ヒト」を核として捉え直そうとすることである。具体的には、海洋活動を、(1)官営汽船、(2)民間海運、(3)海軍の3つのカテゴリーに分類し、それぞれについて「ヒト」の記録を出来るだけ丁寧に掘り起こすというものである。本年度も平成16、17年度に引き続きトルコでの一次史料の収集を行うとともに、データの整理と分析に入った。 (1)について、トルコ海運公社が所蔵する『給与台帳』史料のうち第87巻について全データを記録した。この台帳は1901年末から02年初のわずか1ヶ月間の記録であるが他の台帳にない特徴を有しており、データを分析する上できわめて貴重な情報を含むものであることが判明した。その評価については下記の論文にまとめて発表した。また『人事台帳』第14巻から本研究に関連する部分をデジタルカメラで撮影し、その有用性を確認したので次年度に本格的な調査を行う予定である。(2)について、昨年度に続いて総理府オスマン朝文書館所蔵の『船舶運航許可台帳』から、近世における黒海航路商船の船長の出身地と乗組員のムスリム、非ムスリムの内訳にかんするデータを収集した。(3)については、イスタンブルの海軍博物館付属歴史文書館所蔵の近代オスマン海軍の人事記録の調査を継続した。本年度は総カタログから海軍軍人の出身地にかんするデータの抽出作業を完了した。次年度は個別の台帳を閲覧する予定である。 以上の結果収集した史料、文献、情報を分類・整理してデータ・ベースを構築する作業をすすめた。また、トルコ海運公社の『給与台帳』87巻の資料的重要性について論文を作成した(研究発表欄参照)。
|