2004 Fiscal Year Annual Research Report
明清時代の広東珠江デルタにおける儒教化の潮流と宗族
Project/Area Number |
16520423
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
井上 徹 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20213168)
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Keywords | 儒教化 / 宗族 / 民族問題 |
Research Abstract |
本年度は、本研究計画を進めるうえでの基礎となる作業を行った。次にその成果を箇条書きにしてまとめておきたい。 1、明代の珠江デルタは、多民族雑居、民間信仰の圧倒的優位などの状況により、中央から辺境とみなされたが、16世紀以降、商業化・都市化の発展を背景として、民間信仰に対する弾圧と儒教の拠点(社学・書院)の建設など、地方官僚によって儒教化の政策が実施され、また地元の郷紳たちも儒教化を受容した。この儒教化のプロセスに関する論文を中国語で公表した。 2、儒教化の潮流に巻き込まれた珠江デルタの人々は、漢族の一員であることを証明するために、珠〓巷伝説を作り上げた。自分たちの祖先は中華文明発祥の地である中原から、梅嶺を越えて、広東北部の珠〓巷に移住し、その後、南下してデルタ地帯に再移住を果たしたとするものである。漢族か非漢族かを証明できない人々にとって、この珠〓巷伝説は漢族の名門の出身であることを内外に標榜できる、極めて魅力的な祖先伝説であったために、急速にデルタ地帯の人々の間に広まった。同時に、科挙官僚制を通じて上昇した知識人や商業化・都市化のなかで富を得た商人たちは、珠〓巷伝説に借りて、男系祖先の系譜を作り上げ、系譜関係を軸とした宗族組織を樹立していった。 3、裁判資料『盟水斎存牘』を利用して、明朝最末期に至るまでの間に、珠江デルタではどのような宗族の体制が樹立されたのかを検証した。検討の結果、デルタの人々の生活空間のなかに宗族の活動が組み込まれていることを確認するとともに、共同祖先を祭る宗祠を中心として、宗子と族長の指導体制が成立するに至ったことを解明した。 以上はともに従来の研究が明らかにしてこなかった事実である。
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Research Products
(3 results)