2006 Fiscal Year Annual Research Report
明清時代の広東珠江デルタにおける儒教化の潮流と宗族
Project/Area Number |
16520423
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
井上 徹 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20213168)
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Keywords | 儒教化 / 宗族 / 都市化 / 宗祠 / 漢族 / 非漢族 / 珠〓巷伝説 |
Research Abstract |
本研究では、広東珠江デルタを対象として、儒教化の潮流のなかで、宗族という儒教的な親族組織がどのように形成され、定着したのかを検討することを課題とした。本年度はこれまでに行った作業をもとに研究を集大成した。箇条書きにしてまとめておきたい。 1、儒教化の状況を検討した。16世紀における珠江デルタで最も大きな問題となったのは民衆反乱の頻発である。ヤオ族やチュアン族などの非漢族が漢族及び明朝に対して大規模な闘争を開始し、加えて里甲制から逸脱した漢族の民衆も反乱のなかに身を投じた結果として、1世紀にも及ぶ動乱の状態がデルタ周辺地域に醸成された。これらの動乱が鎮圧される過程において、明朝及び商業化・都市化を背景として登場した地元の郷紳による儒教的な社会規範(礼)による秩序形成が試みられ、デルタ地帯の社会は次第に科挙官僚制を軸とする儒教文化の圏域に組み込まれていった。儒豫化の浸透である。この儒教化の状況を把握するに際しては、広州城周辺とくに仏山鎮という商工業都市を重点的に考察した。 2、明中期以降の動乱の時代における漢化の状況は一つの大きな問題を生み出した。それは漢族たることをどのように証明するかである。漢化した人々は彼らの祖先が非漢族ではなく、漢族出身であることをどのように証明するのか、民族融合が急速に進んだ明代後半の時代においてこのことは重大な問題となった。デルタの人々は、彼らの祖先が中華文明の発祥の地としての中原から珠〓巷という広東北部の土地に移住し、その珠〓巷からデルタ地帯に再度移住したのだとする伝説(珠〓巷伝説)を採用することにより、自己の家系が正統な漢族の系譜に属すことを証明しようとしたことが明らかになった。宗族は三代の時代に生み出された宗法を理想として編成される漢族の儒教的な血縁集団であり、何よりも出自の証明が必要とされたのである。 3、本研究では、顔俊彦という広州府推官が記録した判牘『盟水斎存牘』を主な史料として、明朝最末期の珠江デルタにおける宗族の実像を探求した。宗族形成の要となるのは、祖先祭祀の場としての宗祠であり、宗祠の分布の状況を検証することにより、デルタ地帯の経済を牽引した広州城と仏山鎮の両都市においても最も祠堂が発展を遂げたことが明らかになった。また、祠堂を中心とする宗族組織では、宗子と族長を指導者とする体制が成立し、集団の維持、紛争の解決などに大きな役割を果たしたことも裏付けられた。 以上の研究成果をもとに、成果報告書を刊行した。
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Research Products
(5 results)