2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヨハン・ヤコービの民主主義論-19世紀ドイツ東部市民の国制・議会・民族論-
Project/Area Number |
16520441
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田熊 文雄 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (40101456)
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Keywords | 自由主義 / 民主主義 / 人文主義 / 市民的同権化 / 検閲 / 国民代表制 / 憲法 / 共和制 |
Research Abstract |
本年度においては、ヨハン・ヤコービ(Johann Jacoby 1805-77)の、わが国ではこれまでほとんど解明されていない出生から32歳までの時期(1805-37年)の思想形成と活動について、書簡、ドイツ中央公文書館(ベルリン・ダーレム)所蔵の未公刊史料、研究文献をもとに考察した。ヤコービの出自については、旧ポーランド領出身で、のちにプロイセン王国の東プロイセン州ケーニヒスベルク市に移住したユダヤ系ドイツ人であり、ギムナジウムと大学では、哲学や歴史などの人文主義Humanismus的学問・教養から多くを学び、それがその後のかれの思想の重要な源泉となったことに注目した。プロイセンでは1812年の「ユダヤ人解放勅令」の公布後もユダヤ人に対する様々な社会的差別が存続したのに対し、かれは啓蒙的自由主義的人間・権利論にもついてユダヤ人の市民的同権化を主張した。さらに、そのためは検閲制度の廃止、国民代表制の導入および憲法の制定が不可欠であると考え、30年代後半以降はドイツ市民全体の自由と権利の拡大をより重視し、それを可能にする体制として共和制を評価した点に、かれの思想の自由主義から民主主義への発展の萌芽を指摘した。 また、1830年のロシアからの独立を目指したポーランドの蜂起、およびこれまで実態がほとんど知られていない1831年7月28日のケーニヒスベルク市における都市下層労働者による蜂起とヤコービとの関わりについて史料に基づいて考察した。
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