2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520454
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
河内 信幸 中部大学, 国際関係学部, 教授 (40161278)
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Keywords | ニューディール / ローズヴェルト政権 / 大恐慌 / 連邦芸術計画 / ベン・シャーン / 芸術家会議 / 芸術家組合 |
Research Abstract |
ベン・シャーン(Ben Shahn)は社会派の美術家であり、出自は東欧系のユダヤ人である。シャーンは1906年に8歳で渡米し、ユダヤ人への差別が次第に強まる時期に青年期を過ごした。しかも、父親のシベリア追放や「機会」の国アメリカで受けた辛苦が、彼の作風やモチーフのバックグラウンドとなっていることは確かである。 このようなシャーンのアイデンティティを探るため、本年度は次のような海外調査を試みた。 Iマサチュセッツ歴史協会(Massachusetts Historical Association) マサチュセッツ歴史協会では、移民・都市史のセミナーが開かれており、その資料がかなり充実していることが知られている。特に、Boston Immigration and Urban Seminarは充実した実績を誇っており、東欧系や北欧系の移民についても、その一端に触れることが出来た。 シャーンはリトアニアの出身であり、西欧のアングロ・サクソンと異なるアイデンティティを持っていたと思われる。ユダヤ人としての出自を含め、北欧系の移民の生活状況に触れることにより、シャーンの"社会的リアリズム"の背景を探ってみた。 II「桑の木のなかの音」(Sound in the Mulberry) スミス・カレッジ(Smith College)の美術館に所蔵されている「桑の木のなかの音」は、ホローコーストやイスラエル建国についてシャーンが抱いていた関心を強く表している。たとえば、後姿の少女が眼をやる石碑の上には、「汝、桑のうえに敵の行軍を聞いたら、勇気を起こして立ち向かえ、その時主は汝の前にあり、ペリシテ人の大軍を打ち破るであろうから」と、『サミュエル記』II5章が引用されている。 アメリカのユダヤ人組織は、1947年から49年にかけて、イスラエルの再建と支援のために数億ドルの義援金を集めたといわれており、シャーンはこうした動きを注意深く見守っていたと思われる。「桑の木のなかの音」を通じて、このようなシャーンの民族意識を探ってみた。 以上のような調査や研究を踏まえ、本年度は『ニューディール体制論-大恐慌下のアメリカ社会-』(発行:学術出版会、発売:日本図書センター)を刊行し、第12章に「ベン・シャーンとニューディール美術行政」をとり入れることにより、ニューディールの芸術計画を論述してシャーンと連邦芸術計画の関わりを考察することが出来た。
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Research Products
(1 results)