2004 Fiscal Year Annual Research Report
植民地における都市空間形成とジェンダーの研究-台湾を事例として-
Project/Area Number |
16520480
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
葉 倩い 茨城大学, 人文学部, 助教授 (30242332)
|
Keywords | 植民地 / 都市 / 女性 / 私的空間 / 権力 / 女子 |
Research Abstract |
本研究は、日本植民地支配下台湾において、その社会関係がいかに都市空間構造の形成関係に関与していたかを、ジェンダーに焦点をあてて考祭することを目的としている。権力構造を反映し権力を可視化した植民地都市空間の影で、人々が日常生活を営んできた私的空間や近隣空間の構造を明らかするものである。平成16年度は、私的/近隣空間の担い手である台湾人及び日本人女性の概念形成が社会や教育を通じていかになされたかを考察するため、日本・台湾およびオーストラリアにおいて文献・聞取り調査を行った。 文献調査としては、台湾中央図書館台湾分館において、植民地時代に発行された婦人向け雑誌や書籍、女子教育に関する文献を収集した。婦人向け雑誌としては、日本人及び台湾人上流階級女性を主な読者層とする『婦人公論』、『愛国婦人会報』がある。これらの雑誌では、日本女性のあるべき姿や、子供の日本人としての教育方法に関する記事が多く見受けられ、女性を通した家庭や近隣における植民地支配の促進が積極的に進められていたことを物語る。台湾人上流階級女性は自ら一般の台湾人女性に対して近隣地域などでその啓蒙を行い、支配文化普及の一翼を担っていたことが明らかとなった。一方、女子教育は、将来の家庭の担い手となる女性を育成の理念を反映する。女子を対象とした修身や国語の教科書の他、『台湾教育会雑誌』『台湾教育』などの雑誌を収集し、教育を通じた支配構造の強化の様相を考察した。またオーストラリア国立図書館及びオーストラリア国立大学、コロニアリズム及びジェンダー研究の最新の研究動向を調査した。さらに、日本と台湾において、植民地台湾で日本教育を受けた女性に聞取りを実施し、その結果、学校教育で日本的教育実践を受ける一方、多くの私的空間においては、祖母や母を通じ台湾文化を忠実に実践・継承していたことが成果として得られた。 以上、平成16年度は植民地都市空間の私的領域における女性の役割とその形成過程を明らかにしたが、これは平成17年度における私的空間における権力構造分析の基礎となるものである。
|