2004 Fiscal Year Annual Research Report
経済開発と環境保全をめぐるアクター間の相互作用を通じた地域振興に関する研究
Project/Area Number |
16520492
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
山本 健兒 法政大学, 経済学部, 教授 (50136355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 壽男 法政大学, 経済学部, 教授 (70061190)
西澤 栄一郎 法政大学, 経済学部, 助教授 (30328900)
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Keywords | 循環型地域社会 / 企業間連携 / ゼロエミッション / ネットワーク / 苫小牧 |
Research Abstract |
今年度は,苫小牧地域に立地する企業調査を重点とし、副次的に大牟田地域については市のエコタウン事業に関するヒヤリングと現地観察を行った。ここでは前者の成果の一部について報告する。 トヨタ自動車北海道(株)の提唱によって,2001年9月に「苫小牧ゼロエミッション・ネットワーク」が結成された.これにはほかに,いすゞエンジン製造北海道,出光興産北海道製油所,清水鋼鐵苫小牧製鋼所,ダイナックス,苫小牧ケミカル,日本軽金属苫小牧製造所,日本製紙勇払工場が参加し,さらにアドバイザーとして道央産業技術振興機構が関わっている. ネットワークは廃棄物ゼロ化のための取り組みに焦点を絞っている.参加各企業各社は各社内の廃棄物処理の現場で報告しあい、これを契機に各社が独自の方法で金属加工に伴う汚泥や研磨カスの処理などに取り組んでいる。参加企業のなかには,鉄やアルミニウムなどの端材や切子を排出する企業がある一方で,それらを原料として製造活動する企業や廃棄物処理を通じて資源を回収する側に立つ企業もある.したがって、ネットワークに参加する企業の間に新たな投入産出関係が生まれた事例もある.また,個別企業単独では廃蛍光灯や廃乾電池などの処理が難しかったが,連携することによってゼロエミッションにつなげた事例もある ネットワーク活動は概ね成功し,ゼロエミッション化が各社とも進展している.ただし,ゼロエミッションとは廃棄物がゼロになることではなく,埋め立て廃棄物のゼロ化のことであり,言葉の本来の意味での循環型地域社会の形成に寄与するとしても,直結するとは限らない.企業にとっては,埋立廃棄物ゼロ化の推進により,コスト削減を実現できるという意味は大きい.コスト削減という個別利害の追求が社会全体の利益につながりうる.苫小牧ゼロエミッション・ネットワークと参加企業の行動は,ホーケンの言うナチュラル・キャピタリズムの好例である.
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